PR

熱を積極活用する事例を紹介する。特に自動車では、熱損失が大きく、燃費競争が激しいために、活用技術が今後の競争力を大きく左右しそうだ。熱の時間的な変化を独自の手法でエネルギーに変えようとしているダイハツ工業、温度差発電装置を開発した村田製作所、熱を運搬できるシートで熱ソリューション事業の展開を始めたパナソニックの動きを解説する。

 ガソリン車でありながら1L当たり35.2kmの燃費の軽自動車「ミラ イース」。開発したダイハツ工業が、現在取り組んでいる高効率化の技術は「温度変化発電」である(図1)。同車種クラスの軽自動車の場合、ガソリン燃焼で生み出される全エネルギーに対して走行に使われるエネルギーは20%にすぎない。一方、同じ20%もの熱エネルギーが排気にともない捨てられている。同社は、マフラーから逃げる排気熱を温度変化発電によって活用することで、まずは3%相当の熱エネルギーを活用する目標を掲げる。仮に3%分をすべて走行エネルギーに振り向けられれば、計算上の燃費は40km/Lを超える。

図1 温度の“変化”からエネルギー収集、熱効率の1割超を改善へ
図1 温度の“変化”からエネルギー収集、熱効率の1割超を改善へ
上の図は、エンジンの回転数の緩やかな変化にともなう温度変化をマフラーで電気エネルギーに変える装置のイメージ。マフラーには温度変化発電モジュールを数百個内蔵する。ダイハツ工業が実用化を目指して研究中である。目標を達成できれば熱エネルギー効率を1割以上高めることが可能だ。下の図は、一般的な走行モードでエンジンを回転させたときのマフラーにおける温度変化を車速とともに示したグラフ。100~300℃の変化が見られる。(上の図:同社への取材を基に本誌が作成、下の図:同社)
[画像のクリックで拡大表示]

 「先行開発段階で実用化時期の目標も明確にしていない」。同社で開発を進めている金允護氏(開発部(滋賀テクニカルセンター)先端技術開発 主担当員(課長))はこう言うが、走行エネルギーと同じ排熱エネルギーの活用に大きな可能性を感じている。