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最後のピースは「質感」

 ヘッド・アップ・ディスプレー(HUD)や液晶ディスプレーといった表示デバイスや、ジェスチャーや音声による入力機能、さらにはカメラを中心とした運転者監視システム。自動運転車では多くのエレクトロニクス技術が搭載されていく。

 だが、表示や操作などを担うHMIの開発だけでは消費者を満足させることはできない。自動運転車の開発で欠けている最後のピースが、最終商品として「質感」の高い車内空間に仕上げることである。

 これは単に高級な素材を使うことではない。自動運転化で急増する車室内のエレクトロニクス機器を破綻なく並べ、さらに高い質感を備えた内装に仕上げる努力との二人三脚が重要だ。

 HMIや優れた質感を実現することは、他業界から攻めてくるGoogle社や米Apple社と戦うためにも必要だ。自動運転車を開発するGoogle社に加えて、Apple社も電気自動車(EV)に本格参入すると報じられているからだ。米紙Wall Street Journal(WSJ)は2015年9月、「Apple社がEVの市場投入時期の目標を2019年に設定した」と報じた。2019年ごろに実用化するとされる最初のEVでは、部分的な自動運転機能を搭載するとみられている。

 技術だけを見れば、おそらく飛び抜けた優位性はないだろう。だが、付加価値を高めることは、機能を追加することと同義ではない。Apple社らしいシンプルなデザインと、ユーザーの行動や思考に配慮したユーザー体験(UX:user experience)こそが「Apple Car」の魅力となる。

 Apple社はこれまで、単なる「モノ」ではなく「新しい体験」を提供することで、電話や音楽プレーヤーなどを“再発明”してきた。スマートフォン「iPhone」が日本の電機メーカーを窮地に追いやったように、デザインやUXを推進力に、自動車分野でも既存勢力を一気に追い抜く可能性を秘める。

 Apple社の参入に自動運転時代の到来。自動車業界で長年主役だった“重くて硬いもの”の開発に閉じ込まらず、安全で快適な空間作りに正面から向き合えるか。自動車メーカーの覚悟が問われている。