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90km/hでもエンジンをかけない

 コスト低減とEV性能の向上という新型プリウスPHVが目指した二つの開発目標に対して、最も貢献したのがハイブリッド機構の改良である(図2)。トランスアクスルや駆動モーター、発電機といった主要部品は、プリウスと同一品を使いながら、モーター走行の力強さを打ち出せる仕組みにした。

図2 発電用のモーターも駆動力として活用
図2 発電用のモーターも駆動力として活用
(a)プリウスPHVのハイブリッド機構。HEVのプリウスのものに「ワンウェイクラッチ」のみ追加した。(b)ワンウェイクラッチは、エンジン逆転方向の回転を止める働きをする。(c)発電機「MG1」の出力を加え、加速性能を高めた。
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 最大の特徴は、エンジンと動力分割用の遊星歯車の間に「ワンウェイクラッチ」を追加した点だ。新型プリウスPHVの開発責任者を務めた豊島浩二氏は「先代はEVモードが薄味だった」と表現する。アクセルペダルを踏むとすぐにエンジンが掛かってしまい、モーター走行の頻度が低いのだ。

 不足していた加速感や力強さを、このワンウェイクラッチの追加だけで解決してみせた。発進時はアクセルを最大限に踏んでもエンジンはかからずモーターだけで走行する。さらに、加速時も80~90km/hぐらいまではアクセルをある程度踏み込んでもEV走行が続いた。

 トヨタMid-Size Vehicle Company MS車両実験部動的性能開発室主幹の高山敏明氏によれば、「電池の残量や要求パワーにもよるが、90%くらいアクセルペダルを踏み込まないとエンジンはまずかからない」という。

 トヨタのハイブリッドシステムでは、駆動用モーターの「MG2」と通常は発電機として使う「MG1」の2個のモーターを備える。EV走行はこれまでMG2だけで駆動していたが、今回、ワンウェイクラッチを設けることでMG1も使えるようにした。

 これまでのシステムでは、MG1で駆動力を発生させようとするとエンジンが逆回転してしまう。これを防いで駆動力として使えるようにすることが、ワンウェイクラッチの役割である〔図2(b)〕。ラチェット機構のように、逆転方向の回転はバネとコマによってロックする。エンジンの正転方向には引きずりなく回転できるという。ワンウェイクラッチはNSKワーナー製である。

 MG1の出力は23kWで、これが出力53kWのMG2に加わる。合計で76kWの最高出力となることで、EV走行時における力強い加速性能を実現した。

 ハイブリッド機構と組み合わせるエンジンもプリウスと同一品。排気量1.8Lのガソリンエンジン「2ZR-FXE」で、最高熱効率は40%に達する。

 インバーターとDC-DCコンバーターを組み合わせたパワー・コントロール・ユニット(PCU)も基本構成は同じ。ただし、HEVに比べてプリウスPHVではより大きな電流を扱うためインバーターに少し手を入れた。

 プリウスでは、2個のパワー素子を一つにまとめた「パワーモジュール」を7枚内蔵していた。これに対して、プリウスPHVでは8枚並べている。トヨタHVシステム開発統括部HVシステム開発室主査の武内博明氏は「大きな変更はパワーモジュールを1枚追加しただけ。従来の構造を活用しつつ性能を向上できた」と開発を振り返る。