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コストを数十分の1以下に

 これら多接合太陽電池では、次世代貼り合わせ技術の要である剥離技術も重要で、特にコスト低減に大きな役割を果たす。

 従来、III-V族など化合物半導体の太陽電池は価格面で深刻な課題を抱えている。変換効率こそ結晶Si系太陽電池の約2倍と高いものの、製造コストは同じ面積の結晶Si系太陽電池の数十倍から100倍もしていた。このため、コストパフォーマンスでは結晶Si系太陽電池に太刀打ちできず、人工衛星や超集光型太陽光発電など限られた用途でしか使われなかった。

 これが次世代貼り合わせ技術で大きく変わる可能性が高まった。III-V族系太陽電池の高いコストの主要因となっていたGaAs基板などを剥離し、再利用できるからだ。

 米国National Renewable Energy Laboratory(NREL)は、GaAs基板をELOで剥離し再利用を進めた場合、GaAs系太陽電池の価格は最終的に2013年時点の約27分の1となり、定格1W当たりの単価で結晶Si系太陽電池を下回る可能性があるとする報告を発表している(図4)。

ELO(Etching Lift-Off)=基板の上に形成された犠牲層と呼ばれる半導体層をエッチングで溶かし、犠牲層の上に形成した半導体層を基板から分離する手法。GaAs基板を用いる場合は、その上のAlAs層が犠牲層になる。開発当初は、エッチングにフッ化水素(HF)を用いていたが、最近は塩酸(HCl)でも同様な効果があることが分かり、やや扱いやすくなってきた。
図4 ELOを用いた基板の分離・再利用で価格は1/3以下に
図4 ELOを用いた基板の分離・再利用で価格は1/3以下に
GaAs基板などの剥離技術「ELO」の手順の例と、剥離した基板の再利用などによって、GaAs系太陽電池の価格が1/3になる試算例を示した。将来的には、0.5米ドル/Wと、現行の結晶Si系太陽電池より低価格になる可能性があるとする。(図は、NRELの2013年の報告書を基に本誌が作成)
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 既に、Fraunhofer ISEや日本の貼り合わせによる多接合太陽電池の多くがGaAs層の剥離にELOを採用している。変換効率が40%で、価格が結晶Si系太陽電池と同等以下になれば、エネルギー問題の解決に大きな役割を果たしそうだ注6)

注6)日本に設置されている太陽電池は、系統電力に連係されている分で定格約23GWである。ただし、その多くは変換効率が15%前後だ。仮にこれがすべて同40%に代われば、最大出力は60GW超で、日中の日本の電力需要の1/3~1/2となる。