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 日本企業の新興国への研究開発拠点進出が本格化している。新興国の中でもシンガポールやタイといった先進地域に、研究開発拠点を置く企業が増えている。研究開発を海外で実施するとなると、国内の研究開発は空洞化してしまわないだろうか。

新サービスやソリューションを実証する

 富士ゼロックスは2015年10月に、シンガポールに研究開発拠点「イノベーションオフィス」を新設した。その最大の狙いは「将来を見据えた新しいサービスやソリューションの実証」(富士ゼロックス研究技術開発本部インキュベーションセンター センター長の鹿志村洋次氏)である。単に、東南アジア周辺地域のニーズを把握したいだけではなく、中長期的な研究が目的という。

 そこには「2005年~2010年ごろの研究開発の在り方に対する反省」(同氏)がある。「その時期、研究者は顧客のニーズをつかもうと、営業担当者が困るくらい顧客のもとに通った」(同氏)。当然顧客は喜び、具体的な研究も進む。しかし、本質的なテーマを掘り起こす前に、目先の課題にとらわれてしまったという。

 顧客企業自身が本質的な問題に気づいていることは、それほど多くはない。そして、研究者が研究成果を持って訪問すれば、好意的に考えてくれる。その結果、顕在化していて見えやすい課題の議論に終始してしまうことになる。「本当のボトルネックは何かに迫るには、課題の見方や捉え方(問題意識)自体を変えなければならないのに、それができなかった」(同氏)。

 そこで同社は、顧客を訪ねる前に問題意識とその解決案(ソリューション)をセットで用意し、それを顧客に提案、実証するように研究開発の方針を変えつつある。課題の捉え方が正しいどうかを検証するPOC(Proof of Concept)、それが価値を伴ってビジネスになるかどうかを検証するPOV(Proof of Value)の実行が新拠点の主な役割だ(図1)。

図1 富士ゼロックスがシンガポールに開設した研究開発拠点の役割
図1 富士ゼロックスがシンガポールに開設した研究開発拠点の役割
顧客にニーズを聞くよりも、まず富士ゼロックスとしての課題認識と解決案を考え、それを実証する。
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