今から13年後の2030年。クルマを構成する材料は大きく変わっているだろう。現在、2020年代の実用化を目指して開発されている次世代材料の、さらに一世代先の材料が使われ始めるからだ。“エネルギー効率向上”、“省資源”、そして“軽量化”に貢献する、注目すべき10大材料を紹介する。

2030年に花開く10大材料
目次
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全固体電池向けLGPS系電解質
-30℃の寒冷地でも走れるEVに
2025年から2030年ごろに、車載電池の世代交代が起こりそうだ。様々な“ポストリチウムイオン電池”の候補がある中で、最有力と目されているのが全固体電池である(図1)。電池研究者は一つの開発目標として、エネルギー密度で700Wh/kgの実現を目指す。これは、既存のリチウムイオン電池の3倍を超える数値…日経Automotive
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効率向上、省資源、軽量化を実現
2030年のクルマは電動化や自動運転で大きく変わる。しかし、変革はそれだけではない。2020年代に実用化される材料の一世代先の材料が登場しているだろう。電池、モーター、インバーターといったパワートレーン、外装・内装のボディー、さらに希少資源を置き換える新材料の芽が生まれつつある。日経Automotive
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酸化ガリウム(Ga2O3)
ポストSiCの次世代パワー半導体に
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)など、電動車両の低燃費化のカギを握る主要部品がPCU(パワー・コントロール・ユニット)。PCUの材料は現在、Siが中心だが、2020年代にはSiC(炭化ケイ素)の本格普及やGaN(窒化ガリウム)の実用化、2030年代にはGa2O3(酸化ガリウム…日経Automotive
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カーボン・ナノ・チューブ(CNT)
炭素繊維並みの価格へ、電線に期待
多くの自動車部品の性能を高める可能性を秘めるカーボン・ナノ・チューブ(CNT)。比較的安く造れる多層CNTの普及が先行したが、CNT本来の高い導電性や強度を実現する単層CNTの実用化が近づいている。日本ゼオンが2015年末に、単層CNTの量産工場を稼働した。課題だった価格は、大きく下がる見込みだ(図…日経Automotive
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1-12系希土類磁石、L10型FeNi磁石
脱ネオジム磁石で資源リスク回避
現在の車載の駆動モーターには、ネオジム(Nd)や鉄(Fe)、ホウ素(B)を主成分とする「ネオジム磁石」が用いられている。ネオジム磁石はその磁力の高さから、1980年代初頭の登場以降、30年以上にわたって“首位”の座を維持している(図1)。ネオジム磁石は高温になるほど逆磁場によって減磁しやすくなるので…日経Automotive
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人工光合成電極向けCu系触媒
効率で植物並み、CO2ガスを燃料に
自動車工場や化学プラントなどから排出されるCO2からエネルギー源となる炭化水素を生成する。そんな「人工光合成」システムが、クルマ向けでも2030年ごろに実用化される見込みだ。人工光合成はその名の通り、水(H2O)とCO2、そして太陽光から有機物を生成する植物の光合成を模倣したものである。太陽光のエネ…日経Automotive
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熱電変換材料(Mg-Si系とMn-Si系)
エンジンの排熱で高効率発電
ガソリンエンジンの燃焼エネルギーのうち6~7割は、エンジンの排気やラジエーターの排熱といった形で捨てられている。このエネルギーの損失を低減する方法の一つとして検討されているのが「ゼーベック効果」を利用して発電する熱電変換素子だ。複数の素子を直列につないだ高さ1cm前後、縦横数cmの大きさのモジュール…日経Automotive
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セルロース・ナノ・ファイバー(CNF)
車両質量の2割軽量化を狙う
植物由来の材料で内外装などクルマのさまざまな部品を作る―。2030年には量産車で実現できるかもしれない。期待の新材料は「セルロース・ナノ・ファイバー(CNF)」。これは、植物の細胞壁内に存在し、直径が数nm、長さが数μmほどで繊維状のもの。樹脂に混ぜることで、樹脂の強度を高めてクルマの部品としての適…日経Automotive
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マグネシウム(Mg)合金
Al合金より強く成形しやすくなる
自動車ボディーの外板や骨格に、マグネシウム(Mg)合金を適用する─。燃えにくく、6000系や7000系のアルミニウム(Al)合金並みに強度が高いMg合金の登場によって、2030年までの実用化が視野に入ってきた。日経Automotive
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人工クモの糸
乗員への衝撃を吸収する内装樹脂に
伸縮性のあるクモの巣パターンのネットが体の凹凸を包み込み、荷重を分散すると共に高いサポート性を確保する─。トヨタ自動車が2016年9月に初公開した自動車シート「KineticSeat Concept」がそれだ。日経Automotive
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環動ポリマー導入樹脂
同じ硬さ強さで衝撃吸収は2倍強
ベースのポリマーに対して、破断伸びは約6倍、屈曲耐久性は約20倍、エネルギー吸収性能は2倍強―。そうした、通常時は硬く強く、衝撃を受けても壊れにくいポリマーアロイを開発したのが、東レ研究主幹の小林定之氏らのグループだ。想定している適用対象は、クラッシュボックスのような衝撃吸収部材。将来は、サイドフレ…日経Automotive