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  • 主な用途:樹脂に混ぜて軽量な内外装部品を作る
  • 課題:材料費500円/kgに向けたコスト削減

植物由来の材料で内外装などクルマのさまざまな部品を作る―。2030年には量産車で実現できるかもしれない。期待の新材料は「セルロース・ナノ・ファイバー(CNF)」。これは、植物の細胞壁内に存在し、直径が数nm、長さが数μmほどで繊維状のもの。樹脂に混ぜることで、樹脂の強度を高めてクルマの部品としての適用の幅を広げる。鋼板の代替で使えば、車両質量を2割ほど軽くできる。

 既に試作品を完成させ、性能評価の段階に移っている部品もある。その一つがエンジンカバーである(図1)。京都大学を中心とする研究チームが企業と連携して開発したもの。ポリアミド(PA)にCNFを質量比で約5%添加して作った。

図1 CNF強化樹脂で作ったエンジンカバー
図1 CNF強化樹脂で作ったエンジンカバー
PAにCNFを質量比で約5%添加して作った試作品。従来のGFRP製エンジンカバーと同等の強度を持ちながら、質量は約3割軽くできた。
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 従来のエンジンカバーは、ガラス繊維を質量比で約30%混ぜたガラス繊維強化樹脂(GFRP)である。従来品の質量は約900g。CNF強化樹脂を用いたものを発泡成形と組み合わせることで、質量は約600gと、約3割軽くできた。耐久性は従来品と同程度。耐熱温度は170℃ほどで、エンジンカバーとして必要な耐熱性は満たしている。

 CNFが注目され、クルマ部品への応用が進む理由は大きく二つ。第一の理由は、CNFが木材を原料とする植物由来の材料ということ(図2)。「カーボンニュートラル」な材料であり、生産から使用、廃棄までの環境負荷を総合的に評価するライフ・サイクル・アセスメント(LCA)の点からも環境性が高い。石油由来の材料を使う炭素繊維強化樹脂(CFRP)と比べてリサイクルも容易とされる。

図2 木材の細胞壁からCNFを取り出す
図2 木材の細胞壁からCNFを取り出す
CNFの直径は数nm、長さは数μmほど。樹脂に混ぜることで軽量な自動車部品が作れる。
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 第二の理由は、樹脂に強度を持たせ、なおかつ軽量にできること。京都大学生存圏研究所教授の矢野浩之氏は「CNFの強度は3GPa(鉄の5倍)、密度は1.5g/cm3(鉄の1/5)」と語る。従来の樹脂部品の強度を高めて安全性を向上させることがきる。鋼板に頼っていた部品を、CNF強化樹脂に置き換えられる。

 CNFの造り方には、パルプを水に溶かしてから、細かく繊維を解きほぐして抽出する方法と、化学処理したパルプを樹脂に直接混錬する方法がある。前出の矢野氏が後者を開発したことで、CNFの生産効率は一気に上がった。

 混錬した樹脂には、質量比で約30%のCNFが含まれる。この樹脂を部品メーカーがさらに樹脂と混ぜ合わせ、質量比で5~10%ほどのクルマ部品へと加工する。