ダイハツ工業とトヨタ自動車は、新型の小型車「ブーン/パッソ」を、2016年4月に発売した(図1)。6年振りに全面改良した3代目は、ダイハツが軽自動車で培った技術を活用し、ガソリンエンジン車(軽自動車を除く)でトップクラスの低燃費を実現した。車内を広くした他、安全装備も強化した。
先代のブーン/パッソは、車両の企画とデザインはトヨタが、設計と開発はダイハツが中心で行い、生産はダイハツが担当していた。これに対して新型では、企画から生産までをダイハツが一貫して行った。
先代は2014年4月の部分改良で、排気量1.3Lと同1.0Lのエンジン(ブーンは1.0L車のみ)を搭載していたが、新型は1.0Lのエンジン車だけにした。その理由をダイハツ開発本部製品企画部のエグゼクティブチーフエンジニアである正木淳生氏は、「小型車としての位置付けを明確にするため」と説明する。そして同社は、軽自動車で培ってきた技術を新型に数多く採用した。
圧縮比を12.5に高める
一つめが、ダイハツの軽自動車に採用している低燃費技術である。これにより、軽自動車を除くガソリンエンジン車でトップクラスの28.0km/LというJC08モード燃費を達成した(図2)。燃費の改善に大きく寄与したのが、エンジンの圧縮比を先代の11.5から12.5に高めたことである。
新型ブーン/パッソのエンジンは、先代と同じ「1KR-FE型」(排気量1.0L、直列3気筒)の改良版で、ダイハツの軽自動車「ミライース」のエンジンに搭載している「デュアルインジェクター」を新たに採用した。1気筒当たり2本のインジェクター(噴射装置)を使って燃焼室に燃料を噴射する装置である。
先代のエンジンでは噴射装置1本当たりの噴射口が6個だったが、新型のエンジンでは8個に増やした。これにより、噴射する燃料を微粒化した。また、吸気ポートの形状を改良し、強いタンブル流(気筒内で発生する混合気の縦渦)を発生できるようにした。また、アトキンソンサイクルを適用した他、ピストン形状の改良で摩擦損失を減らした。EGR(排ガス再循環)バルブの応答性を上げ、再利用できる排ガス量を増やした。こうした改良によって燃費を先代より1.5%改善しながら、先代のエンジンと同じ最高出力51kW、最大トルク92N・mを維持した。