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対応の遅れや甘い保守管理などが明らかとなって世間の耳目を集めた、東京都港区の「シティハイツ竹芝」のエレベーター死亡事故。2006年6月の事故発生から10年余りが経った2016年8月、消費者庁が独自の事故調査報告書を公表した。安全工学に詳しい佐藤国仁氏が、同事故が投げ掛けた課題と事故調査報告の課題を解説する(本誌)。

 消費者庁の消費者安全調査委員会が、「消費者安全法第24条第3項の規定に基づく事故等原因調査報告書 東京都内で発生したエレベーター事故」と題した独自の原因調査の結果を公開した。これを機に、本稿では本事故が問う安全な設計と同報告書に足りない課題について考察する1)

コイルの短絡でブレーキが半掛かりに

 事故の概要を簡単に振り返る。事故が発生したのは、2006年6月3日、19時30分ごろ。東京都港区にある「シティハイツ竹芝」の12階にて、被災者(16歳、男性)がエレベーターから降りようとしたところ、戸が開いたままの状態で突然かごが移動(戸開走行)。男性は乗降口の上枠とかごの床部分に挟まれた。その後、救助されて病院に搬送されたものの、まもなく死亡が確認された。その後、事故機を製造・販売したシンドラーエレベータ(本社東京、以下シンドラー)のずさんな対応や保守点検の甘さが明らかになるとともに、本事故が後述の保護装置の義務化などの契機となった*1

*1 シンドラーエレベータは、2016年10月に日本オーチス・エレベータ(本社東京)への保守・サービス事業の譲渡を完了し、同事業では日本から撤退している。