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カリウムイオンで分極を高密度に

 今回、静電誘導での発電効率を高めるため大きく2つの技術を導入した。

 1つは、エレクトレット表面の電荷密度を高める技術。採用したのは、K+(カリウムイオン)を使う手法である。KOH(水酸化カリウム)を数百℃でガス化して櫛歯形構造体を形成後のウエハーに触れさせ、構造体には数百Vの電圧をかけて分極を生じさせる。冷却させると、高い密度の分極が保持される。

 もう1つは、構造体と隙間をそれぞれできるだけ小さくする技術。MEMS(微小電子機械システム)を使い、面積当たりの櫛歯形構造を多数にするとともに、構造体の動きに伴うクーロン力の変化が大きくなるようにしている。試作デバイスの1つは、1283対の櫛歯形構造体を数μmのギャップで形成した。

 実使用環境でより多くの発電が可能なように、幅広い周波数の振動を電力に変換するための工夫もしている。

 MEMSによる構造体には、一般には固有の共振周波数があるため、共振周波数以外の周波数の振動からは大きな電力が得られない。従って実使用時の発電量は大きくならないことがある。そこでQ値を低くして効率特性が周波数に依存しにくい系を形成した。具体的には、エレクトレットの電荷を製造段階で構造体に蓄積する工程において、印加電圧を高めることによってQ値を大幅に低下させられることを確認した。

 エレクトレット材料には熱に弱いというイメージが定着しているが、今回の材料は静電力が1dB低下するまでの期間が65℃で8年、室温で400年以上という加速試験の結果が得られている。

10mW級はイオン液体で

 さらに10mW級の発電を可能とする研究も進めている。

 今回のエレクトレットによる永久分極を利用しイオン液体による電気二重層を形成する。イオン液体とは、陰イオン(アニオン)と陽イオン(カチオン)から成る塩の一種で、常温で液体として存在する。イオン液体による電気二重層によって電極のギャップよりもはるかに短い距離で電荷が向かい合うようにでき、電極の移動で得られる電力を高めやすくなる。

■参考文献

1)Koga,H., Mitsuya, H., Sugiyama,T.,Toshiyoshi,H., Hashiguchi,G., “1mWoutput electrostatic vibratory power generator allowed by optimization of the proof mass,” The 16th International Conference on Micro and Nanotechnology for Power Generation and Energy Conversion Applications (PowerMEMS 2016),Dec.2016.