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 「研究成果は社会実装してこそ意味がある」。2016年4月1日付で富士通研究所の代表取締役社長に就任した佐々木繁氏にインタビューした際、同氏が何度も口にした言葉だ。その同氏が「社会実装という面で課題あり」と指摘したのが、最近のAI(人工知能)ブームを牽引しているディープラーニング(深層学習)技術である。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

 ディープラーニングの有望な応用先としては画像認識を挙げる声が多い。最近は、コンピューターの演算能力の向上によって、認識の精度が上がっている。しかし、精度が高いだけでは限界があると同氏は指摘する。社会実装には、人間の錯覚(錯視)の考慮が必要だという。例えば、周囲の図形によってある図形が大きく見えたり、小さく見えたりすることだ。同氏の社長就任と同時に富士通研内に100名体制でスタートした「人工知能研究センター」では、人間の錯覚を取り込んだ認識技術の開発など、本来あるべき人工知能の研究開発を進めるという。

 同氏就任と同時にスタートした組織はもう1つある。「セキュリティ研究センター」がそれだ。こちらは50名体制で、これまで富士通研が開発してきたセキュリティー技術を富士通の事業へ展開するのが、主な役割である。同氏によれば、富士通研では、人とデータ、システムを守るために、認可認証やデータ保護プライバシー保護、サイバーセキュリティーの技術を多数持っており、このセンターが応用先に最適化した形にアレンジして提供するという。

 これら2つのセンターを早々にスタートさせたのには理由がある。現在、富士通研究所は「ハイパーコネクテッド・クラウド」と呼ぶICTのプラットフォームの実現をビジョンとして掲げている。さまざまなものが連携するクラウドであり、そこで共通基盤技術になるのがAIとセキュリティーである。