今回、撮像素子表面に周期的な構造を設けて、量子効率を高めた(図1)。入射した光が撮像素子内部を通過する光路が長いほど、量子効率は高まる。撮像素子を厚くすればその分、光路が長くなるものの、素子が厚くなってしまう。そこで、撮像素子表面に周期的な凹凸を設けて入射光を回折させ、光路を長くした注2)。ただし、入射光を回折させると、隣接する画素に光が入り、撮影した画像の解像度が低下する。この現象を抑えるために、近赤外光を反射させるトレンチ構造(DTI)を設けた。

注2)開発品の凹凸構造の周期は400nm。セルサイズは、虹彩認証用の従来製品と同じ1.12µmで、画素数は約200万である。

図1 周期構造を設けて量子効率を2倍に
図1 周期構造を設けて量子効率を2倍に
ソニーは、近赤外線イメージセンサー(撮像素子)の量子効率を高めるために、周期的な凹凸を撮像素子表面に設けた(a)。これにより入射光を回折させて、光路を長くした。ただし、入射光を回折させると、隣接する画素に光が入り、撮影した画像の解像度が低下してにじんだようになる(b)。このクロストークを抑えるために、「DTI」と呼ぶトレンチ構造を設けた。この結果、凹凸構造を設ける前と同程度の解像感を得つつ、850nmにおける量子効率を35%前後と、同社従来製品の約2倍を達成した(c)。この一連の技術を新製品に適用した。(図:ソニーの資料を基に本誌が作成)
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 開発品では、凹凸構造を作りやすいSiの(111)面を利用。ただし、同面は一般的な(100)面に比べて界面順位が高くなり、ノイズとなる暗電流が大きくなる。そこで、ある表面処理を施して界面順位を下げることで、暗電流を(100)面並みに抑えた。