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 「米国でバカ売れしています」。野澤記者のこの一言から、今回の特集「音声対話が世界を揺るがす」は生まれました。聞いてみると、米Amazon.com社が製品化した、音声認識と対話機能付きスピーカー装置「Amazon Echo」が2015年の年末商戦以降、品薄状態が続いているとのこと。米国だけで数百万台を販売したといいます。大ヒットの理由を端的に表すと、従来の常識を覆すほど高度な音声認識機能を備えた、声でさまざまな用事を言いつけられる装置が約180米ドルと安価なことです。スピーカーの本来の機能である音楽の検索や再生に加えて、音声による住宅の照明の点灯やニュースの読み上げ、Amazon.com社の製品の発注などが可能な他、Amazon.com社と関係のないサードパーティが提供するサービスが現時点で1400件超もあるのです。例えば、ピザの宅配の注文などが音声だけで完結します。

 Amazon Echoに触発される形で、世界の名だたる企業が音声認識・対話を新しいユーザー・インターフェースとして利用する取り組みを加速させ始めました。米Microsoft社、米Facebook社、米Google社しかりです。各社は“会話”をWebに匹敵する存在と位置付け、注力姿勢を鮮明にしています。一連の動きの背景には、ここ数年で急進展した音声認識技術があり、そこにはディープラーニングをはじめとする技術革新が寄与しています(記事)。

 世界を揺るがす動きは、スーパーコンピューター(スパコン)をはじめとするHPC(High Performance Computing)でも起きています。従来の常識に縛られないアーキテクチャで、性能を引き上げる動きが顕在化してきました。象徴といえるのが、2016年6月20日に発表された、世界一高性能なスパコンを決めるランキング「TOP500」の最新結果で1位に輝いた中国の「Sunway TaihuLight」です。今回、今井編集委員がTOP500が発表されたドイツに急遽出張し、第2特集「アーキテクチャの乱、スパコンで口火」をまとめました(記事)。

 民生エレクトロニクス市場も大きな変化に見舞われています。米Intel社がスマートフォン向け主要製品から撤退、Microsoft社も法人市場に経営資源をシフトし始めました。2016年6月に台湾で開催された展示会「COMPUTEX TAIPEI 2016」では、ポスト・ウィンテルをめぐり、独自の生き残り策に打って出ているエレクトロニクス企業の今が見て取れました(詳報記事)。日経エレクトロニクスが自信を持ってお届けするグローバルの最新技術情報に今後もご期待ください。