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部品メーカーは「電動化」や「サービス化」の波をいかにして乗りこなすのか。駆動部品大手の英GKN Driveline社で製品開発トップのRamon Kuczera氏に戦略を聞いた。

Q 欧州の自動車メーカーを中心に、電気自動車(EV)への移行が鮮明になってきた。

 確かに、2016年秋の「パリモーターショー2016」では欧州勢がEVシフトを打ち出していた。当社としては、パリでの発表を受けて技術開発の戦略を変更することはしていないが、電動車両は今後確実に増えていくだろう。

 2025年には、EVやハイブリッド車(HEV)など何らかの電動化を施した車両が年間販売台数の40%に達すると予測している。2030年にはさらに加速して過半数を超え、部品メーカーである我々にとっても電動化への対応が増えると想定している。

 5年から10年先を見据えた部品開発を進めるために、車両の大きさ別に将来のクルマの姿を予測している。特に変化がありそうなのが小型車で、都市部を走る「シティーカー」の利用シーンは広範囲に拡大すると見ている。車載電池の価格が大幅に低減されてEV化するだろう。当社の既存製品では、最小回転半径を小さくして狭い道でも走り回れるような等速ジョイント(CVJ)の開発を進めている。自動車のドライブシャフトに適用するもので、最大作動角を60度まで拡大させる。

Q 成長領域とする電動車両向けの部品で、特に注力している開発テーマは。

モーターや減速機、インバーターなどを一体化した電気駆動システムだ。これまで自動車メーカーは主要部品を個別に調達して自らシステムに仕上げてきた。だが、各部品のインターフェースを揃えて、性能を発揮させ、さらに小型・軽量化するのには非常に工数がかかる。このシステム統合こそ、我々のような1次部品メーカーに求められている仕事で、商機だと捉えている。

 性能面では、自動車メーカーはより大きな出力トルクを持つ電動車両を開発している。モーターの動力が減速機を経て車輪に伝えられるトルクはこれまで、1500~2800N・mあればよかった。自動車メーカーの要求値が高まっていることを踏まえ、最大トルクが3000~3800N・mの電気駆動システムを開発中だ。

Q 電動化と並ぶトレンドであるサービス化にはどう対応するのか。

サービス化の代表格であるカーシェアリングが始まると、クルマの使用頻度の面で劇的な変化が起こる。今まで眠っていた車が起き出すからだ。1日のうち5%の時間しか動いていなかったものが、90%稼働するようになる。すると、走行距離は簡単に数万マイルを超えるだろう。

 この影響を正面から受けるのが部品の耐久性だ。これまでとは比べ物にならない堅牢性が必須になる。まだ新しい開発領域で、取り組みの状況としては“検証中”というのが正直なところである。確保すべき走行距離や期間などを見極めているところだ。

 既存領域で耐久性が求められてきたタクシー部品では、経年変化を定期的にモニタリングしてきた。今後はIoT(Internet ofThings)を活用したセンシングや、シミュレーションも取り入れて耐久性に優れた製品を提供していく。

ラモン・クジラ(Ramon Kuczera)
GKN Driveline社Senior Vice President Engineering and Technology
1974年生まれの米国人。米Oakland Universityで機械工学の博士号を取得。自動車用駆動系システムの開発を長く担当した。2007年、GKNDriveline社の米国地域におけるエンジニアリング担当のVice Presidentに就任。2015年から同社におけるグローバル全体の製品開発責任者を務めている。