ドイツVolkswagen(VW)社の日本法人は2018年2月、ディーゼルエンジンを搭載した中型車「パサート」を発売した。日本でのディーゼル車の発売は20年ぶりである。発売に合わせ、VW社Advanced Diesel Engine Development, Head of DepartmentのEkkehard Pott氏がディーゼルエンジン技術の現状と今後について語った(図1)。
ディーゼルエンジンは出力の点ではガソリンエンジンと大差ないが、低回転速度域でのトルクがガソリンエンジンを大きく上回る。このため、混雑した都市部でも力強い走りを楽しめる。燃費も優れる。ドイツ人の運転者552人に対して調査した結果では、ディーゼルエンジンの方がガソリンエンジンに比べて平均で約20%燃費が高かった。その一方で、排ガス中の粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)を減らすシステムが必須になる。
現状の排ガス処理システムは、尿素水「AdBlue」の噴射モジュール、酸化触媒、SCR(選択触媒還元)コーティングしたDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)から成る(図2)。尿素水を均一に噴射するために「ツインジェット」と呼ぶ噴射装置を利用している注)。
2017年夏にドイツ自動車連盟(ADAC)が実施した走行時の排ガス測定では、VW社のNOxの排出量は146mg/kmであり、ランキングでは第2位となった。「2015年の排ガス不正問題はあってはならないことであり、そこから多くを学んだ」(同氏)。その結果、「電子制御ユニット(ECU)のプログラムを書き換えることなく、世界でも最も厳しい排ガス基準を満たせることを証明した」(同氏)。