トヨタ自動車は自動運転技術の開発状況について「オートモーティブワールド2018」(2018年1月、東京ビッグサイト)で講演した。「二つのアプローチで開発を進めている」(先進技術開発カンパニー先進安全先行開発部主査の松尾芳明氏)という。
一つはサービスカー向けにレベル4の自動運転を早期に実現するアプローチである(図1)。走行する地域や速度などに制限を持たせることでレベル4を早期に実現し、配車サービスなどのMaaS(Mobility as a Service)用途に活かす。同社は2018年1月の「CES 2018」で電気自動車(EV)「e-Palette Concept」を発表したが、「今後はe-Paletteを軸にサービスカー向けの開発を進めていく」(同氏)という。
もう一つはオーナーカー向けに自動運転のレベルを2、3、4と段階的に上げていくアプローチである。この方法では、それぞれの段階で新技術をより早く実用化できることから、「少しでも交通事故の低減に貢献できる」(同氏)という。例えば、同社が2017年10月に発売した高級車ブランド「レクサス」の新型セダン「LS」では、レベル2の上位に相当する「Lexus CoDrive」と呼ぶ運転支援技術を搭載する(図2)。「消費者に過信や誤解を与えないように、あえて自動運転技術とは呼んでいない」(同氏)という。
2020年頃には自動車専用道路向けの自動運転技術「Highway Teammate」を実用化する。「ここで初めて自動運転技術と呼ぶ」(同氏)。その後、2020年代前半には一般道向けの自動運転技術「Urban Teammate」を導入、将来はあらゆる道路での完全自動運転(レベル5)を実現する。一般道向けの自動運転技術の開発では、3次元レーザーレーダー(LIDAR)などを搭載した実験車両を使い、東富士研究所周辺の一般道を中心に試験を実施している。
自動運転システムの安全性を確保するためには、膨大な走行試験が必要になる。少なくとも人間が運転する場合と同等の安全性が必要であり、「そのためには実走行だけでなく、シミュレーション技術の導入が不可欠」(同氏)という。シミュレーション技術では、多くの実走行データを取得し、高精度な仮想環境を構築することが重要になる。開発車両だけではなく、実社会で走行している車両のデータも必要であり、「例えばタクシー業界と連携してデータを取得する取り組みなどが重要になる」(同氏)と述べた。