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 「路面に照射する光のイラストを動かして周囲に注意を促し、夜間の安全性を向上する」「人工知能(AI)の実装を安く省電力にする」「モーターやインバーターを高効率・小型にする」─。三菱電機は2018年2月、自動車関連の最新技術を発表した。

 クルマの動きに対応した光のイラストを、車両周辺の路面に投射する技術の進化版を公開した。クルマの動きを周囲の歩行者や車両に事前に伝えやすくなり、安全に貢献する。

 電動車両や自動運転車での採用を期待する。例えば、電動車両ではモーターだけで走行するモードがあり、エンジン走行時に比べて走行音は小さい。周囲が気づきにくいが、光のイラストで補える。また、人が運転しない完全自動運転車に使えば、人の代わりに周囲に合図を送って注意を喚起できる。

 三菱電機がこれまで提案してきたのは、光のシンボルを路面に静的に投射するものだった。雪道など路面が凸凹していると、イラストの形が崩れて何を伝えようとしているのか分かりにくかった(図1)。進化版では、イラストを動かし「アニメーション」にして、周囲に意図を伝えやすくした。

図1 後退を示す光のイラストを雪の積もった路面に照射した例
図1 後退を示す光のイラストを雪の積もった路面に照射した例
山状のイラストを四つ重ねて後退することを示すものだが、雪面では形が崩れて認識しにくかった。
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 例えば、車両が前進・後退する場合は、進行方向が分かりやすいように、進む向きに山状のイラストを段階的に増やしていく。従来は、積み重ねた山を一括して投射していた。進化版は、車両に近い側の山を最初に投射し、時間をずらして進む向きに山を追加する方式とした。イラストの形が崩れても、光の動きで車両の進行方向を感覚的に認識できる。

 超音波センサーのような車載の外界センサーと連動させる機能も追加した。車両の近く、すなわち危険領域に入った歩行者や自転車などに強く注意を喚起できる。例えば、運転者がシートベルトを外し、かつ超音波センサーで歩行者や自転車などの接近を感知したとき、運転者にはドアの内側のライトを点滅させて歩行者などの接近を知らせる。同時に、車両の横の路面には、ドアが開こうとしていることを示唆するイラストと感嘆符を投射(図2)。周囲の歩行者などに注意を促す。

図2 ドアが開くことを歩行者に伝える表示
図2 ドアが開くことを歩行者に伝える表示
(a)扇形状の光のイラストを車両の横に、黄色い感嘆符を車両の斜め後方に照射して注意を喚起する。(b)扇形状のイラストは頂角を小から大に変化させることでドアが開くことを感覚的に知らせる。(aの出所:三菱電機)
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 ドアが開くことを示すイラストも動かす。最初は頂角の小さい扇形状のイラストを投射し、時間をずらして頂角の大きな扇形状のイラストに切り替える。光のイラストを投射する装置は、ドアミラーや車両の前後に搭載する。

 自動車メーカー向けに、路面に投射した光のイラストの見え方を評価し、同イラストの種類や動かし方を変更できるツールを開発した(図3)。同イラストが遠くからどう見えるのか、小さな子どもからどう見えるのかなどをパソコン上で3次元動画を用いて検証できる。同技術の実用化の目標時期は、2020年以降。自動車メーカーの意見を聞きながら実現していく考えである。

図3 光のイラストの見え方を評価するためのツール
図3 光のイラストの見え方を評価するためのツール
3次元動画を使って光の見え方を評価できる他、光のイラストの種類や動かし方を変えられる。(出所:三菱電機)
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