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 2015年9月18日、自動車業界に衝撃が走った。ドイツVolkswagen(VW)社による米環境保護局(EPA)の排ガス規制に対する不正回避問題が、EPAによって明らかにされたからだ(図1)。その後、同問題は欧州にも飛び火。深刻さは度合いを増している(関連記事参照)。同社はどんな不正を行ったのか、その背景には何があったのか──。専門家の推定・見解を基にまとめた。

図1 ドイツVolkswagen社の2015年型「Jetta」
図1 ドイツVolkswagen社の2015年型「Jetta」
制御システムに米環境保護局(EPA)の排ガス規制を不正に回避する違法ソフトが含まれていたディーゼルエンジンを搭載する車種の一つ。
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 VW社が行った不正は、排ガス規制を骨抜きにするソフトウエアを排気量2.0Lの4気筒ディーゼルエンジン「EA189」の制御モジュールに組み込んだことだ。同ソフトによって、排ガス試験中かそれ以外かを自動で判定。排ガス規制の規制対象の一つとなっている窒素酸化物(NOx)の排出量を、排ガス試験のときだけ実走行時よりも減るように操作していた。排ガス試験のときだけNOxの排出量を減らす浄化システムを機能させ、それ以外は浄化システムを無効化するという操作を行っていたのだ。

 こうしたソフトは、自動車業界では「ディフィート・デバイス(無効化装置)」と呼ばれる。欧米では、その使用は違法とされ、日本でも日本自動車工業会が自主規制をかけている。

 当然、こうしたソフトを使えば、実走行時のNOx排出量は規制値よりも増える。EPAの発表によれば、その排出量は走行パターンにもよるが、規制適合レベルの10~40倍にも上る。