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安全性の検証作業は道半ば

 ただし、神戸製鋼自身が安全と判断した三つ目のケースは、「安全性を確認した」と言い切るのは難しい。同社会長兼社長の川崎博也氏は、「できるだけ早く、出荷先の顧客に安全を確認してもらえるように努力を続けている」とする。つまり三つ目のケースを除くと、現時点で安全性を確認できたのは、約60%の320社にとどまる。同社の確認作業は「道半ば」である。

 データを偽装(改ざん・捏造)した製品が出荷されたのは自動車、航空機、鉄道車両など広範囲に及ぶ。自動車メーカーにとって問題なのはAl合金の板材や押出材、鋳鍛造材。神戸製鋼のAl合金の板材はフロントフードやドアなど、押出材は前後バンパーなど、鋳鍛造材は足周り部品などに使われている。

 今回のデータ偽装では、常温における引っ張り強さや降伏応力、伸びなどの機械的特性を、顧客が求める仕様に合うように一部の製品で書き換えていた。これらの特性が仕様に合っていないと、ボディーの強度や衝突安全性能などに悪影響を及ぼす恐れがある。

 Al合金の鋳鍛造材については、今回の検証作業で自動車に使われていないことが判明したが、Al合金の板材は国内外の多くの自動車メーカーが使っている。

 トヨタ自動車は、神戸製鋼から直接調達して一部の車種に使っているAl合金の板材は、安全性や耐久性に問題がないことを確認した。取引先の部品メーカーが使っている同板材も問題はないとする。

 ただし、その他の製品(Al合金の押出材や鋼線、ステンレス鋼線など)については、調査を継続中だ。日産自動車やホンダなど他の国内メーカーや、米GM社などの海外メーカーも、トヨタと同様の状況である(表2)。

表2 自動車メーカーの対応(10月26日時点)
Al合金の板材では安全性を確認できたものが出てきたが、その他の製品は調査を継続中。
表2 自動車メーカーの対応(10月26日時点)
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製造現場に欠ける“順法精神”

 今回のデータ偽装の根底にあるのは、神戸製鋼の製造現場における杜撰(ずさん)さである。川崎氏は、「JIS(日本工業規格)の範囲に収まっていれば、顧客の求める仕様から少し外れても問題はないという考えがあったようだ」と、顧客との契約を軽く見ていたことを認める。

 顧客との契約違反だけではない。子会社のコベルコマテリアル銅管は、JISの規格を満たしていない製品を出荷していたことなどを理由として、JIS認証を取り消された。神戸製鋼グループとしての順法精神も問われる。同社は2017年内に、徹底した原因分析と全社的な再発防止策を含む報告書をまとめる予定である。この報告書の内容が、信頼回復に向けた第一歩となる。