トヨタ自動車、マツダ、デンソーの3社は2017年9月、電気自動車(EV)の基本構想を共同で開発する契約を締結し、新会社「EV C.A. Spirit」を設立した(図)。3社以外にも参加企業を募り、各社で電池やモーター、インバーターなどの基幹部品を共通化し、量産効果によって部材コストの低減を目指す。
EVは販売台数が見込めないため、トヨタはマツダのほか、ダイハツ工業やSUBARUなどにも参加を募り、まとまった数量の部材を調達することでコストを抑えたい考えだ。そのためには電池やモーター、インバーターなどの基幹部品を参加企業間で共通化する必要がある。新会社は、そのための話し合いをする“事務局”と考えられる。
マツダをはじめ、中堅の自動車メーカーはEVを自力で開発する余力はないものの、どのようなEVを実現したいかという青写真は持っている。このため、電池やモーターなどの基幹部品をトヨタに勝手に決められてしまうのは困る。新会社では、電池の容量や重さ、モーターの大きさなど、各社が求める要件を出し合い、「最大公約数的な条件を決めていく」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券のエクイティリサーチ部エクイティリサーチ課シニアアナリストの杉本浩一氏)との見方がある。EVのコモディティー化を防ぎ、差異化するための方策や設計手法についても知恵を出し合うとみられる。
実際の技術開発は、トヨタのEV事業企画室が主導するとの見方が多い。同企画室が開発を進める上での“前提条件”を決めるのが、今回の新会社の役割ともいえる。このため、新会社の資本金は1000万円と少なく、活動期間も2年間に限定されている。
新会社の出資比率はトヨタが90%、マツダとデンソーが5%ずつだ。人員構成を見ると、トヨタが17人、マツダが16人、デンソーが数人の計約40人となっている。ただし、トヨタは役員を3人含んでおり、実際にはトヨタが主導するのは間違いない。新会社の所在地もトヨタの名古屋オフィスとなっている。
ダイハツなど、複数の自動車メーカーが参加すれば、共通の条件をそろえるのは難しくなるものの、量産効果による低コスト化は見込める。特にダイハツが手がける軽自動車は、技術的にはEVに向いているとの指摘が多い。街乗り用の軽自動車は航続可能距離が数十kmと短くてよく、ガソリンエンジンが苦手とする発進と停止を繰り返すからだ。
新会社を通じた今回の枠組みは、「目の前の環境規制には間に合わない」(同氏)ようだ。米国カリフォルニア州の環境規制はすでに始まっており、欧州のCO2超過排出量に対する罰金も2019年から厳しくなる。こうした規制には、各社とも採算度外視で対策するしかない。今回の枠組みは「2021年以降を見すえた動き」(同氏)であり、共通化した部品の量産効果を通じてコスト競争力を高めていくとみられる。