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製造業のさまざまな業務に深層学習を応用することを狙った情報処理基盤(プラットフォーム)の提案が相次いでいる。工場や社内で生じる豊富なデータを生かして、業務の自動化や効率化を図れる。大手メーカーとベンチャー企業が手を携えて、業界標準の座を目指す。

 「最終的には、数千億円以上になると感じている」。ファナックが2016年12月末に最初の製品を発売する「FIELD system」の事業規模を問われて、同社 代表取締役会長の稲葉善治氏はこう答えた。2015年度の同社の連結売上高6234億円を倍増させると言わんばかりの発言だ。FIELD systemは、いわゆるIoT(Internet of Things)向けの情報処理基盤(プラットフォーム)である。その大きな売り物は、ディープラーニング(深層学習)を用いて、高い水準で業務の自動化や効率化を図れることだ。

 深層学習を製造業のさまざまな業務に生かす動きが、日本国内で相次ぎ浮上した。いずれも、特定分野で強い大手メーカーと深層学習技術で先行するベンチャー企業がタッグを組む(図1(a))。各社の狙いは深層学習を活用する際の業界標準の基盤になること。ものづくりを得意とする日本の環境に乗じて、IT分野から深層学習の応用を進める米Google社などの海外勢に差をつける心積もりだ注1)

注1)米Google社も自社の業務の範囲内で深層学習の応用を進めている。2016年7月には、同社のデータセンターの冷却用のエネルギーを、傘下の英DeepMind社の深層学習技術で40%削減できたと発表。開発した手法は工場の生産効率の向上などにも適用できるという。ベンチャー企業では、米Osaro社が産業用ロボット向けの深層強化学習技術を開発しており、2017年にも製品化する計画だ。同社には米PayPal社共同創業者のPeter Thiel氏や、米Yahoo!社共同創業者のJerry Yang氏といった著名投資家が出資している。
図1 製造業の業務に深層学習
図1 製造業の業務に深層学習
製造業のさまざまな業務で発生するデータに深層学習を適用することで、業務の自動化や効率化を進める動きが活発になってきた。大手メーカーとベンチャー企業が協力して、業界標準の処理基盤(プラットフォーム)を構築しようとしている(a)。深層学習を使うと、これまで人手を要していたデータから知見を抽出する作業を、ほぼ自動化できる(b)。
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 IoTの処理基盤に深層学習を用いる最大の利点は、センサーから集まる膨大なデータを使って、半自動的に知見を導けること(図1(b))注2)。必ずしも学習が成功するとは限らないが、人間が求めるより優れた結果を得られる場合が多いという。

注2)従来は、データの分類に使う特徴量や、データを基にしたシステムの制御法などは、人間が試行錯誤や理論に基づいて設計してきた。深層学習では、ニューラルネットワークの構造などを決めれば、後は膨大なデータからの学習でこれらを求められる。