
半導体設計を手掛ける大企業が減っている。一方、IoTと呼ばれる小口案件は増えるばかり。こうした中で重要性を高めているのが、両者の間を取り持つ半導体商社だ。伝統的に米国企業が強かったが、今は台湾企業、中でもWPG社が世界をリードしている。なぜそうなったのか。日本の半導体業界もこのトレンドから決して無縁ではいられない。
これから半導体商社の再編が間違いなく加速する。ムーアの法則という打ち出の小槌が効きにくくなったからだ。そこでファブレスを含めた半導体メーカーは続々とM&A(合併・買収)を断行。NXP、Avago、Freescale、Linear…こうした名立たる大企業が歴史上にのみ名を残すようになる。2016年のM&A総額は11月までに実に1302億米ドル。2015年は1100億米ドル少々。2014年までは年300億米ドル前後に過ぎなかった(表1)1)。
経営統合した半導体メーカーは販売チャネルを選別して流通コストを下げていく。実際、丸文はもうオランダNXP Semiconductors社製品を直接取り扱えなくなった。丸文は、NXP社の前身の前身である米Motorola社の販売代理店だった。
こうした流れにびくともしない半導体商社が台湾にある。WPG(大聯大)社だ。競合の米Avnet社と違ってWPG社は、伸びが小さい日本市場開拓に非常に消極的だ。それ故、知名度はとても低い。しかしWPG社は2014年、半導体を中心とした電子部品販売高で世界トップに立った。世界の8%、アジア太平洋地区の代理販売高の27%は、WPG社の手による。現在も成長を続けており、2016年の連結売上高は180億米ドルに達しそうだ(図1)。
WPG社の中国販売力は強い。実際、売上高の顧客本社別比率は2016年第3四半期に、中国が58%、台湾が33%になった。2006年時点では中国が38%、台湾が50%だった。WPG社が扱っていない半導体を見つけることはもはや困難だ。仕入れ先メーカーは250社以上に及ぶ。中国では技術サポートという名の代行開発が欠かせない。WPG社は売上高の大きさを生かしてFAE(Field ApplicationEngineer)を880人も抱えている。従業員総数の16%に当たる。