(本記事は「日経エレクトロニクス」2017年6月号の「“安川流”スマート工場に向け「AI」「IoT」で外部を取り込む」の後編です。前編はこちら)
自社工場を最新の通信技術やAIのテストベッドに
――2018年度に稼働させる次世代の自社工場「ソリューションファクトリー(仮称)」には、最新の通信技術やAI、自動化技術を導入するそうですね。

筒井 安川電機の主力製品は、ロボットの可動部に利用する「サーボ(サーボモーターやサーボアンプ)」、産業用モーターを駆動するインバーターといった産業機器向けの部品です。顧客企業がこれらを組み込んだ産業機器を製品化し、顧客企業が販売した機器は最終ユーザーである機器メーカーの工場で商品の製造に使われます。
一連の商流や製造プロセスの中で、安川電機の製品がどのように利用されているのかを把握しないと、「工場のスマート化」という世界的な流れを正確に捉えた製品を開発できません。そこで自社製品のテストベッドとして、次世代技術を集めた生産工場を立ち上げます。自社工場を自ら進化させることで、製品の課題や新たな開発目標が見えてくるはずです。ソリューションファクトリーは2018年度下期の稼働予定で、本格的に動き出すのは2019年度になるでしょう。実際に導入する新しい製造設備や技術については現在検討中です。
―― 工場のスマート化を進める上で、センシングデータの送受信や、産業機器間のデータのやり取りに使う通信ネットワーク技術はこれまで以上に重要な役割を果たします。安川電機が開発し、公開している通信規格「MECHATROLINK(メカトロリンク)†」は既に多くの装置で採用されていますが、今後どのように進化していくのでしょうか。
筒井 MECHATROLINKは、FAネットワークの階層のうち下層に当たる「フィールドネットワーク」の領域に向けた通信技術です。特に、製造装置を動かすサーボの性能を引き出すための技術と位置付けています。
工場におけるIoT活用の流れの中で、フィールドネットワーク領域では装置間のデータ連携を実現するために、MECHATROLINK以外の複数の通信規格に対応する必要が出てきました。この課題を解決するために2017年1月に製品化したのが、複数の通信プロトコルに対応した通信IC「ANTAIOS」です。グループ企業のドイツprofichip社が開発した通信ICで、サーボアンプに実装することでマルチプロトコルに対応できます。