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まず全体構造を議論するドイツ

 ドイツはなぜ短い労働時間で日本並みの品質を実現できるのか。経営統合を機にドイツの働き方を観察する中で、いろいろと分かってきました。

 まず、ドイツは年間計画や中期計画といったスケジュールを作るのが上手です。それは、自分自身の行動を細かくプログラミングしているともいえます。中長期のスケジュールがあるからこそ、その日にやるべき仕事が見えているし、休みも取れます。自分のプログラム通りに自分を動かしているわけです。ある意味、精密機器みたいなものです。

 一方、日本はスケジュールをなかなかうまく作れません。ひとまず始めて、後で調整するのが日本のやり方です。初動は早いかもしれませんが、プログラムがないから何をいつまでにやればいいのか分からないし、そんな状況ではまとまった休みも取りにくい。日本の社員には、「当社は工作機械のメーカーなのだから、工作機械のプログラムを作るのと同じように、自分自身の行動もプログラミングしてください」と言っています。

 ドイツが中長期のスケジュール作りに長けているのは、博士人材が豊富なことも大いに関係しているのではないでしょうか。最近はIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などのテーマで日独の代表者を集めた会議に出席する機会があるのですが、参加者が各国10人ずつだとしたら、ドイツはだいたい8人ぐらいが博士です。しかも、工学や理学だけではなく、法学や哲学といった文系博士も半分ほどいます。日本はせいぜい3人ぐらいで、ほとんどは理系です。

 そのような会議で、ドイツの人々は個別の議論よりも全体構造の議論に時間をかけます。いきなり技術や製品の話から入るのではなく、「IoTやAIを活用する社会の仕組みはどうなっているべきか」とか、「社会の仕組みに合わせて法律の構造をどう変えるべきか」とか、そういった大枠を決めてからでなければ次の議論に進みません。

 だから、ドイツでは「インダストリー4.0」のような産官学プロジェクトにしても、製品やITシステムの開発プロジェクトにしても、全体構造を記した分厚い仕様書が最初に出てきます。(ドイツを拠点とする欧州の)SAP社のERPパッケージのような非常に複雑なITシステムを実現できるのも、全体構造の議論を重視する文化があるからでしょう。