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設計と生産の橋渡し役に

 同種の業務を個別に手掛けている人は決して少なくありません。ただし日本では分業化が進んでいて、コンピュテーショナルデザインを活用する設計者、ロボットの専門家、IoT(Internet of Things)を活用した工場の専門家などが別にカテゴライズされています。そんな中で私たちは、設計から製造・施工まで横串で関わる橋渡し的なエンジニアになりたいと考えています。

 最近、特に力を入れているのがロボットによる製造・施工です。

 コンピュテーショナルデザインを学んだ人なら、その自由度の高さや効率の良さは理解しているでしょう。短時間で何百回、何千回というシミュレーションをした上で、条件に適合した設計案を幾つでも作成できる。人間の既成概念を超えた発想が生まれる。最近はコンピューターのスペックも向上し、計算技術も進化してきたので、無限の可能性を感じられます。

 しかし、いざその設計に基づいて製造しようとすると、現実の物体には物性のばらつきがあり、高いハードルとなって立ちはだかります。どんなに正確で高度な計算をしても、計算と現実のモノの世界には絶対ズレがあります。ここを放置したままではモノを造れない。設計の自由度に比べて、モノを操る技術はまだ発展途上と言ってもいいでしょう。

 誤差やばらつきを許容できるような計算をしておかないと、一つひとつ全て異なるモノを製造することはできません。製造現場の人間は素材の誤差やばらつきを、経験で補正しながら加工してきました。優れた補正能力を持つ人たちが「職人」と呼ばれました。私たちはそんな職人の技をロボットに学ばせようとしているのです。

 幸いにも日本には優れた職人が大勢います。師匠がいるうちにロボットを弟子にして、技を継承しなくてはいけない。だからロボット自らが考えて動く自律制御が必要なんです。決められた形を繰り返し削るだけじゃない。新たな動きを覚えます。人ができることを何でもできるようにするのが目標です。

 例えば、床に置かれているコップの縁を認識して、ハンドの先でなぞることもできます。コップの縁が円形でも楕円形でも、どんな形でもなぞります。通常のNC(数値制御)ではこうはいかない。入力された数値にしたがって動くだけなので、円形なら円形しかなぞれません。

 NC制御は人が経験や体験に基づいて、感覚値で動くような機敏さに欠けるわけです。自律制御型ロボットは、計算値と結果との差を比較して調整していくフィードバック制御を取り入れています。コンスタント(定数)ではなくバリアブル(変数)でプログラミングすることで柔軟に適応できる設計にしています。

 例えば、剛性の低い部材の上をA地点からB地点まで直線で動いて切削するとします。ロボットが幾何学的に正確に動いても、そのものの剛性が弱いからまっすぐ切れるとは限りません。しかし、AからBまで正確に直線を描くのではなく、ある地点で3mm逃げて、その後2mm戻ったら結果的に直線で切れたと分かったとします。すると「直線で動かなくていい」という発想が出てくる。何度も何度も動かして、剛性の低い部材に順応しながら直線に切る方法を学んでいきます。

 もちろん大変です。多関節の人間と違って、産業用ロボットはたった6、7軸しかないわけですから、人間と全く同じというわけにはいきません。でも、トライアル・アンド・エラーを繰り返して、だんだんできるようにしていく。これが私たちのアプローチです。

 ポイントはロボットと材料の特性を知り尽くすことです。必要に応じて、加工のために必要な道具を独自に開発します。その上で加工方法を考案し、コンピューターの計算で動きを調整すると、できなかったことができるようになるのです。