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今回開発した可視光向けレクテナに、緑色のレーザー光を照射してその変換効率を測定している様子
今回開発した可視光向けレクテナに、緑色のレーザー光を照射してその変換効率を測定している様子
(写真:Rob Felt、Georgia Tech)
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作製した可視光向けレクテナの主な構造
作製した可視光向けレクテナの主な構造
(図:Thomas Bougher, Georgia Tech)
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 米国の大学Georgia Institute of Technology(Georgia Tech)の研究者は、可視光を受光して電力に変換するレクテナ(rectenna)を開発した。レクテナとは、アンテナに整流用ダイオード(rectifier)を組み合わせて、電磁波を直流電力に変換するデバイス。半導体のpn接合を利用する太陽電池とは発電原理が全く異なる。

 現時点で可視光向けレクテナの変換効率はまだ1%未満と低いが、開発者は、今後最適化を進めることで、変換効率40%の太陽光発電素子を、既存のSi系太陽電池の1/10のコストで製造できるようになると主張する。実現すれば、世界のエネルギー事情が大幅に変わりそうだ。開発成果の詳細は、学術誌「Nature Nanotechnology」に論文としてまとめられた。

 レクテナは、波長が10cm前後のマイクロ波では90%以上の高い変換効率を実現できている。これを大幅に小型化して光を電力に変換する試みは1960年代からあった。ただし、当時は製造技術上の制約から波長が10μm長以下の赤外線や可視光向けレクテナを作るのは難しかった。

 今回、Georgia Tech,Associate ProfessorのBaratunde Cola氏の研究チームは、アンテナとして金属型多層カーボンナノチューブ(CNT)、ダイオードとしてMIM(Metal-Insulator-Metal)構造の素子を利用することで、可視光向けレクテナを試作。効率は低いながら発電することを確認したという。「製造技術が高度化したことで可視光向けレクテナに挑戦する機が熟した」(Cola氏)。

CNTがアンテナと、MIM構造ダイオードの"M"を兼ねる

 製造プロセスの概要は以下のようになる。まず、導電性の基板上に多層CNTを垂直に成長させ、“CNTの森”を作る。次に、化学的気相成長法(CVD)を用いて、酸化アルミニウム(Al2O3)の非常に薄い膜でCNTの森をコーティングする。次に、カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)の薄膜をその上にスパッタリングで形成する。

 CNTの森の上に積層した材料は、すべて可視光に対して透明であるため、光を照射するとCNTにまで光が届く。結果、CNTがまずロッドアンテナの役割を果たす。そして、CNT自身、Al2O3層、そしてCa/Al層がMIM構造のダイオードを構成する。

 CNTとCaの仕事関数の違いから、電子はCNTからCa側へと一方通行に流れる。また、このMIM構造のダイオードは充放電の時定数が非常に小さく、フェムト秒(10-15秒)の高速応答性を備えているという。これは可視光の周波数である数百THzに十分追随できる応答性である。このため、作製した素子は可視光に対するレクテナとして機能するとする。

 既に、関連する技術の特許は、米国のほか、欧州、日本、中国で申請済みという。