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 今後、車載半導体はどう進化していくのか。その設計技術はどう変わるのか。デンソーの石原秀昭氏(IC技術2部 担当部長)が「DAシンポジウム2015」(情報処理学会 システムとLSIの設計技術研究会が石川県で2015年8月26日~28日に開催)の招待講演で語った。

図1●講演する石原秀昭氏(左端) 筆者が撮影。スクリーンは同氏のスライド。
図1●講演する石原秀昭氏(左端) 筆者が撮影。スクリーンは同氏のスライド。
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 冒頭、同氏は、自動車へのエレクトロニクス導入の歴史を説明した。1955年の車には、センサーもECU(Electronic Control Unit)も皆無だった(図1)。2004年になると、すでに100のセンサー、70のECUが搭載されている。これによって安全性、環境への配慮、快適な乗り心地などが実現された。

 興味深かったのは、カーエレクトロニクスと民生エレクトロニクスの違いだった。スマートフォン向けの半導体と比べたら、車載半導体は、品質、コスト、供給の面で、かなり事情が異なる。「動作保証する温度の範囲が広い(-40~125℃)ですよね」と言われることが多いそうだが、実は、以下の点が大きく異なるそうだ。

  • 出荷した部品に不具合が見つかったとき、回収して解析するためのトレーサビリティが重要。
  • 長期間(~10年)にわたって部品を供給しなければならない。
  • 非常に低い不良率が要求される。

 将来の自動車に関して、必ず言われるのがEV(電気自動車)の普及である。デンソーの予測では、100%電気で走るEVだけでなく、ハイブリッド車(プラグインハイブリッド車含む)、アイドリングストップ(ISS)車、従来通りのエンジンのみ、でシェアを分け合い、EVの普及の程度は、電池の技術革新次第ということだった。一方、将来は水素が最有力であるとするグループもいるし、暫く多様化の時代が続くということである。

リアルタイム処理にメニーコアは不向き

 続いて同氏は、これからの車載半導体の方向性について、次の3つの視点で論じた。(1)コンピューティング、(2)センシング、(3)トータル設計方法論(高位設計)である。

 まず、(1)のコンピューティング。最近のMPU(Microprocessor)やMCU(Microcontroller)では、消費電力と発熱量の増加という問題から、クロック周波数の上昇ではなく、並列処理によって、性能向上が達成されるようになってきた。サーバー、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォンでも、複数のプロセッサーコアを搭載したマルチコア/メニーコアのICが普及している。

 当然、車載半導体でも、メニーコアによる並列処理が利用されると考えられる。しかし、これがそう簡単ではないと、同氏はいう。エンジン制御では、「ハードリアルタイム処理」、すなわち、決められた時間(デッドライン)内に、タスク(処理)を完了することが要求される。処理を分割して並列化させても、コア間通信のオーバーヘッドのために性能があまり向上しない場合がある。また、タスクの実行時間が短かったり長かったりと、ばらつくのは望ましくない。結局、最長の時間で考慮しなければならないことから、並列処理による高性能化は、容易ではない。

 ただし、安全運転のために使われる画像認識処理のように、データごとに並列処理が可能なケースでは、メニーコアが非常に有効に働くとした。

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