一般的な有機薄膜太陽電池(左)と、今回のPNOz4Tによる太陽電池(右)
一般的な有機薄膜太陽電池(左)と、今回のPNOz4Tによる太陽電池(右)
無機太陽電池にはない、有機薄膜太陽電池に特有の駆動力によるエネルギー損失がないため、光エネルギー損失が小さくなり、電圧が高くなる(出所:JST)
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今回のPNOz4Tによる太陽電池素子とPNTz4Tによる素子の電流-電圧特性
今回のPNOz4Tによる太陽電池素子とPNTz4Tによる素子の電流-電圧特性
吸収できる太陽光エネルギー(バンドギャップ)がほぼ同じでありながら、PNOz4Tによる素子は電圧が高い(出所:JST)
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有機薄膜太陽電池の光エネルギー損失と変換効率の関係
有機薄膜太陽電池の光エネルギー損失と変換効率の関係
従来の有機薄膜太陽電池の多くは光エネルギー損失が0.7eV以上と高い。光エネルギー損失が小さい材料の場合、変換効率は低くなる傾向があった。PNOz4Tによる太陽電池は、光エネルギー損失が小さく、かつ、エネルギー変換効率が高い。ピンク色の領域は光エネルギー損失が無機太陽電池並みに小さい(出所:JST)
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 科学技術振興機構(JST)、理化学研究所、京都大学は12月2日、塗布型の有機半導体による有機薄膜太陽電池の光エネルギー損失を、無機半導体による太陽電池並みに低減できる半導体材料を開発したと発表した。

 有機薄膜太陽電池は、半導体の性質を持つ高分子の有機化合物材料(半導体ポリマー)を、プラスチック基板に塗って薄膜化することで作製でき、低コスト化や環境負荷の抑制、大面積化に向く上、既存の無機太陽電池にはない、軽量で柔軟という特徴を持つ次世代太陽電池として注目されている。

 JSTの戦略的創造研究推進事業において、理化学研究所 創発物性科学研究センターの尾坂格上級研究員、瀧宮和男グループディレクター、京都大学 大学院工学研究科の大北英生 准教授らの研究チームが開発した。

 有機薄膜太陽電池の実用化に向け、変換効率の向上が課題となっている。一般的に、有機薄膜太陽電池は光エネルギー損失が0.7~1.0eVと、無機太陽電池の0.5eV以下に比べて大きいため、吸収できる太陽光エネルギー(バンドギャップ)に対して出力できる電圧が無機太陽電池に比べて小さいことが、高効率化を妨げていた。

 今回、新たに開発した半導体ポリマー(PNOz4T)を使うことで、有機薄膜太陽電池の光エネルギー損失を、無機太陽電池並みの約0.5eVまで低減できた。さらに、変換効率も最大9%と、有機薄膜太陽電池としては高い値を示した。こうした有機薄膜太陽電池は、これまでに発表されたことがないとしている。

 開発したPNOz4Tによる薄膜を、分光法により解析したところ、薄膜の改善によって、変換効率がさらに向上する余地があるという。PNOz4Tの性質を最大限に引き出すことができれば、有機薄膜太陽電池の変換効率は、実用化レベルの15%程度まで向上する可能性があるとする。さらに改良を加え、2016年度末には変換効率12%を目指す。

 今回の研究成果は、12月2日に英国のオンライン科学誌「Nature Communications」で公開された。