10kW以上はシステム費用を検証
出力10kW未満の余剰売電比率も示された。年報データから確認した設備利用率の中央値は13.7%(平均値:13.8%)に達し、従来想定していた12%を上回っていた。余剰売電比率の中央値は70%(平均値:69%)で、想定値の60%を大きく上回っている。発電出力と余剰売電の比率は、平均出力4.7kWに対して余剰売電比率は71%と、中央値に近い値となった。
FITの施行当初は、正確なデータが得られなかったため、余剰電力買取制度と同様に設備利用率12%、余剰売電比率60%を想定値としていた。その後、PCSの変換効率の向上や、太陽光パネルの大規模化などにより、設備稼働率、余剰売電比率とも上昇したと見ている。
住宅用は、買取期間が10年のため、11~20年目の余剰売電分の買取価格が決まっていない。従来は家庭用電力料金単価(24円/kWh)を11~20年目の自家消費と売電単価として設定していた。だが、2016年4月には、電力小売市場が全面的に自由化され、旧・一般電気事業者は低圧の小売部門で他社と競合することになり、高い買取単価の設定は現実的ではなくなる。
そこで、買取開始11年目以降の余剰売電分の買取価格は、卸売市場価格を目安とした。2015年の昼間平均スポット価格は11.95円、直近の特定規模電気事業者の回避可能費用が10.72円であることから、11円程度を想定する案が示された。11年目以降の収入が大幅に減るため、1~10年の買取価格を引き上げる方向に働くとみられる。
出力10kW以上の太陽光発電では、システム費用の算定で、従来採用してきた、出力1000kW(1MW)以上の中央値を取る手法を続けるかどうか、検証が必要ではないかとした。出力1000kW以上と同10kW以上全体のシステム価格の差は、従来の5.2万円/kWから3.6万円/kWに縮小している。
「効率的な費用水準」として、出力1000kW以上の中央値より、さらに低い値を採用する可能性も示唆した。
一方、出力10kW以上の設備利用率は14%、土地造成費は0.4%、接続費は1.35万円/kW、運転維持費は0.6万円/kWと、いずれも従来通りに据え置いたらどうかとしている。
住宅用太陽光発電では、買取価格が上がる要因と下がる要因が示された一方、出力10kW以上ではシステム費用の下げ方向だけが示唆された。