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三菱総合研究所 ものづくり革新事業センター長 主席研究員の稲垣公雄氏。
三菱総合研究所 ものづくり革新事業センター長 主席研究員の稲垣公雄氏。
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 「日本の製造業は、強みである現場力、人・組織のすり合わせの力をいわばデジタル化し、強みを加速すべき」――三菱総合研究所 ものづくり革新事業センター長 主席研究員の稲垣公雄氏は、同社が報道向けに紹介した「『ものづくり』革新~IoT・AI等新技術がもたらす日本の製造業の可能性と課題~」で、述べた。いわゆる第4次産業革命は、IoT、AI、ビッグデータ解析、ロボット、3Dプリンターといった新技術を使い、リアルタイムの「つながる化」「最適化」「自動化」を進め、製造業を変えるというもの。IoTのプラットフォームやAI、web上などでのビッグデータ解析では完敗感のある日本だが、「リアルデータの部分ではまだやりようがある。特にものづくり分野では日本の強みを生かし、さらに伸ばすことが可能」(稲垣氏)と見る。

 なぜ今、製造業を変えるべきなのか。それは今が日本の製造業にとって絶好の転換時期にあるからだ。例えば、中小企業・大企業とも設備投資は5年連続で対前年比プラスとなっており、製造業は息を吹き返しつつある。

 さらに、いわゆるバブル崩壊後の1990年代~2000年代の「失われた20年」は、製造業にとって「失われたのではなく、苦闘の20年だったに過ぎない」(稲垣氏)とする。これは1992年に中国が市場経済化し、当時、日本との賃金格差20倍だった中国に生産拠点が流出するという競争が始まったことで、逆に地方の中堅企業などを中心に国内に雇用を残そうと、必死の生産性の改善が進んだのが実情だというわけだ。苦闘の20年の間に高めた生産性を、IoTやAIといった新技術と組み合わせることで、さらに発展させる段階にあるとする。

ある工場の例が挙げられた。当初、中国との賃金格差は20倍とされたが、生産性は1/4だったという。つまり、日本では10台の装置を5人で動かせるが、中国の場合は10台の装置を20人で動かす必要があったという。つまり、実質的な賃金格差は5倍になる。そこで、日本ではさらに実質的な差を減らそうと、生産性をさらに5倍高め、10台の装置を1人で動かせるようにした。もちろん、中国も生産性の向上を図って10台の装置を7人で動かせるようになったが、賃金格差自体が3~5倍へと縮小しており、生産性の高さから日本の工場で十分対抗できるようになったという。
ある工場の例が挙げられた。当初、中国との賃金格差は20倍とされたが、生産性は1/4だったという。つまり、日本では10台の装置を5人で動かせるが、中国の場合は10台の装置を20人で動かす必要があったという。つまり、実質的な賃金格差は5倍になる。そこで、日本ではさらに実質的な差を減らそうと、生産性をさらに5倍高め、10台の装置を1人で動かせるようにした。もちろん、中国も生産性の向上を図って10台の装置を7人で動かせるようになったが、賃金格差自体が3~5倍へと縮小しており、生産性の高さから日本の工場で十分対抗できるようになったという。
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 一方で、変化への対応を迫られている時期でもある。製造業における「企画」「設計」から「生産」、「販売」「サービス」という一連の過程の中で、従来、日本企業が重きを置いていた生産の付加価値が低下し、同時に「企画」「設計」や「サービス」といった過程の付加価値が高まるという、付加価値のシフトが始まっている。つまり、これまでの「プロダクト品質」から「機能品質、運用品質」への転換の対応が急務になっているという。