国立がん研究センター 東病院は、リキッドバイオプシーに関する臨床研究を2018年2月に開始した。結腸・直腸がんを含む消化器・腹部悪性腫瘍の患者を対象とする。血中を循環する腫瘍DNAの断片を低侵襲で迅速に解析するため、従来の腫瘍組織の生検が持つ課題を克服することが期待される。
今回の臨床研究は、米Guardant Health社が開発した高感度な遺伝子解析技術「Guardant360アッセイ」を用い、産学連携全国がんゲノムスクリーニング事業「SCRUM-Japan GI-SCREEN」の研究として実施する。Guardant360アッセイは、血液から73種類の遺伝子の変化を一度に測定できる。
従来、がんの組織検体を用いて遺伝子解析を行っていたが、消化器がん患者の血液(20mL)を用いて遺伝子解析を行う。従来の腫瘍組織の生検は侵襲が大きく、患者への負担が大きいことから、複数箇所の生検や繰り返しの生検を行って遺伝子を解析することは困難だったが、それを克服できる可能性がある。
検体は遺伝子解析を実施するGuardant Health社に送付され、RAS、BRAF、PIK3CA、HER2、MET遺伝子異常などがんに関連する73の遺伝子異常の有無を調べる。遺伝子解析の結果は約2週間で判明するという。
まずは、抗EGFR抗体薬による治療歴のある大腸がんの患者約200人を対象とするが、今後は全消化器がん患者約2000人に対象を広げ、リキッドバイオプシーを使った遺伝子解析の有用性を確認する予定という。この研究で、特定の遺伝子異常が見つかった患者は、対応する治療薬の臨床試験へ参加できる可能性がある。
今後、研究成果により、がん治療に結びつく血中の遺伝子異常や腫瘍組織の遺伝子異常との違いが明らかになれば、がんの遺伝子異常の変化の解明が期待される。さらに、リキッドバイオプシーを用いた個別化医療の実現に向けた検討をすることが可能になるという。