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今回開発したナノカーボン分離膜の調整法(図:JSTのプレスリリースより)
今回開発したナノカーボン分離膜の調整法(図:JSTのプレスリリースより)
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各調製条件におけるナノカーボン分離膜のSEMおよびAFM画像(写真:JSTのプレスリリースより)
各調製条件におけるナノカーボン分離膜のSEMおよびAFM画像(写真:JSTのプレスリリースより)
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スパコンのシミュレーションによる窒素ドープしたナノカーボン膜の構造モデル(図:JSTのプレスリリースより)
スパコンのシミュレーションによる窒素ドープしたナノカーボン膜の構造モデル(図:JSTのプレスリリースより)
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 信州大学は2016年4月8日、新しい膜形成手法(ドライプロセス)によって従来のDiamond-Like Carbon(DLC)膜より柔らかい炭素ベースの水分離膜を開発し、脱塩性能最大96%を達成したと発表した(ニュースリリース)。これは海水淡水化で使われる標準的な逆浸透(RO)膜の脱塩・透水性能よりは劣るが、従来のDLC膜よりも高く、RO膜として実用化できる可能性を示した。

 DLCは、ダイヤモンド構造と炭素構造がハイブリッド化したアモルファス(非結晶)のナノカーボン膜。ハードディスク表面や工具類、ペッドボトルなどのコーティング材などさまざまな用途に使われている。今回、従来のDLC膜をベースに、ナノ構造を最適化することで、高度な水処理に使用できるナノカーボン製の水分離膜を開発した。

 プラズマ化したアルゴン、窒素、メタンを衝突させることでカーボンなどの分子を弾き出して基材上に付着・堆積させるスパッタ法を用いて、厚さ20n~30nmのナノカーボン層を形成した。添加する窒素の量を調製することで脱塩性、透水性、耐塩素性を最適化でき、窒素ドープ量を増やすことで、高いNaCl除去率を示すことを見出した。

 多孔質高分子膜(ポリサルフォン/PSU)の基材上に、犠牲層(ポリビニルピロリドン/PVP)をコーティングし、その上からスパッタ法でナノカーボン分離膜を形成し、その後コーティング層を溶かすプロセスで調製する。この方法で得られたナノカーボン分離膜は従来のDLC膜よりも柔らかく、走査型電子顕微鏡(SEM)および原子間力顕微鏡(AFM)の画像で均一に成膜されていることを確認した。

 さらに、アモルファスカーボン(a−C)の窒素ドープ量の違いによるナノ構造モデルを、スーパーコンピューターを用いてシミュレーションした。その結果、窒素ドープ量を増やすと各所にクラスターを作ることで膜内部の空隙が減ると同時に、窒素クラスターの極性化も影響して透水性や脱塩性が向上することが裏付けられた。

 科学技術振興機構(JST)が推進するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラム「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」の一環。「活気ある持続可能な社会を構築する」という将来ビジョンに向けて、世界的な水不足を解消する革新的な造水・水循環システムの構築を目指し、塩分を含む海水・随伴水・かん水という3つの水源を脱塩するためのキーテクノロジーとして研究開発した。

 今回の研究成果は、英科学誌「Nature」系の専門誌「NPG Asia Materials」電子版に4月1日付で公開された。同論文に関する特許は申請済み。