米SunPower社は変換効率が高い太陽光発電パネルで世界をリードするメーカー。同社は最近になって、日本での販売拠点を本格的に整備し、日本のビルや工場の屋根上に太陽光発電パネルを展開する活動を始めた。SunPower社の日本法人SunPower Japan 代表の田尻新吾氏に、同社の戦略や狙いを聞いた。(聞き手は、野澤 哲生)
――日本での販売拠点を増やしていると聞いた。
田尻氏 現在30社を日本における代理店としているが、2~3年後には100社に増やす計画だ。これまでは、OEMの形で当社のブランドは出さずにパネルなどを販売していたが、今後はSunPowerのブランドを立てて、発電システム全体で他社との違いを明確に打ち出していく方針だ。
――違いとは?
田尻氏 変換効率など品質の高さ、そして長期的な信頼性だ。日本では固定価格買い取り制度(FIT)が買い取り期間を20年と定めているせいもあり、パネルメーカーも最長で20年しか保証していない例が多い。一方で、信頼性の高い太陽光発電パネルの90%は40年後でも稼働するというデータがある。特に我々のパネルは「バックコンタクト構造」であることで配線など切れる部分がなく、劣化要因が少ない。このため、20年の買い取り期間が終わったからといって、発電をやめてしまうのは合理的ではないと考えている。発電期間が長ければ長いほど、平均の発電コストは下がるからだ。
既に海外では長期信頼性の高さが製品の重要な競争力の1つになってきている。米国では、太陽光発電事業者または太陽光発電パネルのメーカーが利用者に提示する保証「Power Purchase Agreement(PPA:電力購入契約)」の期間が伸びてきている。日本では多くが20年だが、米国では30年が一般的だ。
我々が日本で考えているのもこの期間を25年に伸ばすことだ。しかも、販売するハードウエアの保証ではなく、発電出力を保証する形にしたい。つまり、保証期間中に絶対故障しないというのではなく、故障すればパネルなどを取り換える契約だ。利用者が“買う”のは、発電システムのハードウエアではなく、発電機能であるはずだからだ。
ただし、出力保証の実現は、自社の販売チャネルでないと難しい。これが、今、日本で販売拠点を増やしている大きな理由の1つだ。我々は米国で既に、「SunPower Helix」というパッケージで、30年保証の発電サービスを始めている。日本でも2016年末には25年保証で同サービスを始めたいと考えている。
――日本ではFITの買い取り価格が急速に下がってきている。今から市場に本格参入するのは、買い取り価格の点でも立地探しの点でも遅いのではないか。
田尻氏 FITの果たした役割は大きいが、いつまでも頼れないのは日本だけでなく世界中どこでも同じだ。我々は太陽光発電が、FITなどの助成がなくても他の発電システムに対して競争力がある電源になる必要があると考えている。
この点、我々の太陽光発電パネルは変換効率が約23%と高い。実際、変換効率が20%を超えれば、従来の太陽光発電に付きまとっていた「2流の電源」というイメージは当てはまらない。
だからこそ、信頼性が重要になってくる。特に、パネルだけではなく、発電システム全体の信頼性が重要になる。我々は米国では、多くの事例で複数のパネルをつなげて利用するパワーコンディショナーの代わりに、パネルごとに利用するマイクロインバーターを採用している。この場合、先ほど触れた出力保証時のパネルの取り換えも、より実現しやすい。日本ではマイクロインバーターは規制上まだ利用できないが、2017年ごろに認可されそうだと聞いている。
立地については心配していない。FITに向いた安くて広い土地は地方に多かったが、メガソーラーの普及で確かに残り少なくなってきた。一方で、日本の都市部にあるビルの屋上や工場の屋根は未活用であるケースが多いからだ。東京や名古屋、大阪といった大都市だけでも数十万件の潜在的“案件”があると見積もっている注1)。
日本のビルは高層である一方で屋上部分の面積は小さく、高効率の我々のパネルが生きる。しかも、自社のビル屋上に載せるパネルなら、20年で終わりとはならず、長期信頼性が重要になる。
我々のSunPower Helixは設置が容易であることも特徴の1つだ。米国に多い平屋根ではネジを一切使わず設置できる。日本の工場の屋根は傾いていることが多いので、ある程度の仕様変更が必要だと考えている。