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 クラウドベースの経費管理システムを手掛ける米Concur Technologies社は、紙の請求書をOCR(光学文字認識)で電子化し、クラウドネットワーク上で管理できる企業向けサービスの提供に日本で乗り出す。請求書に記載された情報を従業員が手入力する手間を軽減できることに加え、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル環境で上司が経費申請を承認する機能や、コスト削減のための経費分析機能を提供することで請求書の管理業務を効率化できるという。既に欧米やアジアで提供しているサービスを日本語化し、日本独自のビジネス慣習に合わせて新機能を追加した。

請求書処理プロセスの各工程で、生産性・ガバナンスの両観点における課題が想定されるという(同社)。
請求書処理プロセスの各工程で、生産性・ガバナンスの両観点における課題が想定されるという(同社)。
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 サービス名は、「Concur Invoice」。同社の日本法人コンカーが2016年5月10日に日本でサービスを開始した。日本企業の請求書処理プロセスでは、社内システムに手入力した請求書データと一緒に、紙の請求書を管理職に回覧し承認を得ることが一般的だ。その後、経理部門で請求書と入力データの突き合わせ作業を経ることになる。しかし、このプロセスではデータ入力の余分な作業が必要になることに加え、管理職による、いわゆる「ザル承認」や、発注額の健全性確認の不行き届きなど企業のガバナンス面で課題が多いとの見方が強い。

 Concur Invoiceの特徴は、これらの課題を解決する機能を備えていることだ。OCRを用いた請求書の自動読み取り機能によって手入力の負担を軽減すると同時に、データ入力のヒューマンエラーを防止しやすくなる。電子化されたデータはモバイル端末でどこからでもアクセスできるため、管理職が出張中であっても遅滞なく承認できる。取引内容を可視化するデータ分析機能で不当な高額発注や承認の滞留、取引先への支払い状況などを分析することで経費の無駄を削減する効果があるという。

アップロードした画像(画面右)をOCRで読み取り、項目名や数量、価格などが自動で画面左の欄に入力される。読み取りに失敗したデータは、画像からの文字列のドラッグ&ドロップで簡単に修正できる。
アップロードした画像(画面右)をOCRで読み取り、項目名や数量、価格などが自動で画面左の欄に入力される。読み取りに失敗したデータは、画像からの文字列のドラッグ&ドロップで簡単に修正できる。
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 現状ではOCR機能を用いて漢字などを100%正確に認識するのが困難なため、フィリピンのマニラにある「Concur BPOセンター」の専門スタッフによる読み取りデータ補正サービスも有償のオプションで提供する。

 これまでConcur社は、従業員の交通費や備品購入などの経費を管理する「Concur Expense」を日本国内で提供していた。今回、Concur Invoiceの提供を開始したことで取引先からの請求書データもクラウドネットワーク上で一元管理できるようになる。

 日本向けのサービスでは、新たに請求書と複数の注文書をひも付ける機能や、接待の会合に同席した関係者をトラッキングする機能を追加した。これは、日本独自のビジネス慣習である月締め会計制度や、交際費の透明性を管理したいというニーズに対応するためだ。「国内企業の業務体系や海外向けサービスの導入阻害要因を入念に調査し、自信をもって日本企業に対応するサービスを開発した」(同社 代表取締役社長の三村真宗氏)という。

コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏。日本市場向けサービスへの自信を見せた。
コンカー 代表取締役社長の三村真宗氏。日本市場向けサービスへの自信を見せた。
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 財務省は、「e-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)」で定める規制を2016年内に緩和し、スマートフォンで撮影した画像データで領収書の原本を代替できるようにする方針だ。Concur社は、この規制緩和に対応するため領収書画像の保存に関連した新機能を開発し、2017年に提供する予定という。

 Concur社は1993年創業で、約3200万ユーザーが利用する経費管理システムの大手企業。2014年にソフトウエア大手のドイツSAP社の傘下に入っている。