辻野氏は、破壊的なイノベーションを起こすには、将来の社会の姿を想定し、その姿から現在を振り返り、今何をすればいいかを考える「バックキャスティング」が重要だと考えている。
日本メーカーでは、過去の積み上げの上に未来を考えるアプローチを取るケースが多い。だが、米電気自動車(EV)ベンチャー、Tesla Motors社の会長兼CEOであるElon Musk氏は、遠い未来をまず予想してから今すべきことを考える経営スタイルだ。
例えば、2050年に世界の人口が100億人近くに増加すると、環境への影響を考えると地球に人類が住むことが困難になる。その前提に基づき、「人類を火星に移住させなければならない」とMusk氏は本気で考えている。
実際に米SpaceX社という宇宙開発ベンチャーを起業し、再利用可能な宇宙ロケットを開発。打ち上げ実績も重ねており、実際に火星に人類を移住させる計画も推進している。この計画には長い時間がかかるため、環境悪化を少しでも食い止めるためにEVベンチャーのTesla社を起業し、世界からガソリン車を駆逐しようとしている。
もちろん電気を作る際に石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を使うと、トータルの環境負荷は減らせない。そこでMusk氏は太陽光発電システムのベンチャー、米SolarCity社の経営にも関与している。未来を考えて、今できることに全力を尽くす経営スタイルだ。