家庭用太陽光発電とヒートポンプ給湯機の最適運用モデル
家庭用太陽光発電とヒートポンプ給湯機の最適運用モデル
(出所:JST)
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ヒートポンプ給湯機の最適運転によるコストメリット
ヒートポンプ給湯機の最適運転によるコストメリット
(出所:JST)
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各ケースにおける正味電力消費量、太陽光の自家消費率
各ケースにおける正味電力消費量、太陽光の自家消費率
(出所:JST)
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 東京大学は6月7日、ヒートポンプ給湯機のデマンドレスポンス(DR:需要応答)の効果を評価し、その結果を発表した。それによると、家庭用太陽光とヒートポンプ給湯機を最適に運用することで、2~4kWhの蓄電池に相当する効果があることを確認した。

 今回の評価事業は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業の一環で、家庭用太陽光の固定価格買取制度(FIT)の終了に伴い買取単価が大幅下落する「2019年問題」への対応手法の1つとして想定した。

 2012年に開始されたFIT制度では、家庭用太陽光発電システムには48円/kWhの買取価格が適用されていた。一方、2019年に買取期間が終了する対象は1992年7月~2009年10月設置分の120万kWといわれており、その後毎年10~20万件程度が買取期間が終了する見通し。それに伴い、買取価格は5~10円程度に大幅下落する見通しで、この対応として太陽光発電の自家消費ニーズが拡大するとみられる。

 研究グループは今回、家庭におけるDR効果を定量的に評価するため、ヒートポンプ給湯機と蓄電池の最適運用モデルを構築した。同モデルは、太陽光発電と給湯機(蓄電池)を保有する世帯で、24時間先までの料金を最小化する。過去需要・発電量、気象予測から前日夜23時に翌日の給湯重要、電力需要、家庭用太陽光発電を予測し、それに基づいて給湯機と蓄電池の運転計画を作成し、当日は計画と実需要に基づいて運転する。

 今回、導入電力は旧一般電気事業者のオール電化向け新料金(昼間32円kWh、夜間16円/kWh)、家庭用太陽光発電余剰買取価格は10円/kWhと想定した。最適運用の場合、晴れた日には湯沸かし運転が余剰電力で行われ、ベースケースの電気料金の7%に相当する平均5786円/年のコストメリットが生じる。また、最適化を行わず、翌日の予測家庭用太陽光発電量が基準値以上の場合「晴れ」と判断し、10時に湯沸かし運転を開始し、それ以外は従来通り夜間運転という簡易な手法でも、平均コストメリットは5338円/年で、最適運用に近い効果が得られた。

 一方、蓄電池の価格を2020年目標値の9万円/kWhに想定し、単純償却年数を検討した。家庭用太陽光発電保有世帯が2~10kWhの蓄電池を導入することで余剰発電を貯蔵し、夕方以降に放電することで、1万~3万2000円/年のコストメリットが生じるが、蓄電池容量が大きくなるにつれてコストメリットが飽和する。蓄電池容量が小さいほど償却年数が短くなるが、最も短いものでも電池の公称寿命である10~15年では電池のコストを回収できない結果となった。

 ヒートポンプ給湯機の最適運転と蓄電池の導入による正味の電力消費量(買電量―売電量)と太陽光の自家消費率(自家消費量/発電量)の変化を比べると、蓄電池の場合は充放電によるロス(それぞれ90%)が発生するため、正味の電力消費量は電池がないベースケースに比べて大きくなる。一方、ヒートポンプ給湯機の最適運転では、省エネになるため正味の電力消費量が8%減少する。さらに、最適運転によって太陽光の自家消費率はベースケースの32%から45%に増加する。これは、2~4kWhの蓄電池導入の効果に相当すると確認した。

 今後は、実フィールドで実機に導入できるヒートポンプ給湯機の運転方法など、より現実的な家庭用太陽光の自家消費量を拡大する効果の評価を検討する。また、長期的には、再生可能エネルギーを大量導入したときの電力系統全体の柔軟性向上にもヒートポンプ給湯機を活用し、その貢献について全国的に評価していく予定。