昭和シェル石油と同社子会社のソーラーフロンティア(東京都港区)は9月1日、サウジアラビアでの太陽光パネル生産の可能性についての予備調査に関し、同国国家産業クラスター開発計画庁(NICDP)、国営石油会社・サウジアラムコと覚書(MOU)を締結したと発表した。
今回の取り組みは、サウジアラビアの掲げる経済改革方針「VISION 2030」の一環となる。この経済改革を推進する中で、サウジアラビアでの太陽電池生産の技術面・経済面での予備調査を4者が共同で実施することになった。
ソーラーフロンティアは、CIS化合物型太陽光パネルの生産・販売で、世界トップの実績を持ち、今回のパネル生産の対象も、CIS型パネルとなる。昭和シェルでは、「具体的な予備調査内容に関しては現時点で未定」としている。
ソーラーフロンティアはすでに海外生産拠点として、米国ニューヨーク州への進出に布石を打っている。2014年4月、米ニューヨーク州立大学ナノスケール理工学カレッジ(CNSE)と太陽光パネルの共同生産などの予備調査に関して、覚書を締結した。サウジアラビアでの予備調査は、米国に続くものとなる。
一方で、同社は、サウジアラビア、サウジアラムコとの関係も深かった。2011年には、サウジアラムコに対し、10.5MWのパネルを供給した実績がある。同社のオフィス複合施設「ノースパーク・コンプレックス」に電力を供給するため、敷地内にあるサウジアラムコのアルミドラオフィス駐車場(4450台分)の屋根上にCIS型パネルを設置した。太陽光パネルが設置された駐車場として世界最大規模となっている。
加えて、同年秋には同国ファラサン島内の500kW規模の太陽光発電所にパネルを納入した。このプロジェクトは、ソーラーフロンティアとサウジ電力会社、昭和シェル石油との共同事業で、同島にあるディーゼル発電所内に設置し、燃料コストの削減と島内の環境保全を進めている。ソーラーフロンティアは、パネルの提供に加え、稼働後のO&M(運営・保守)に関し、技術サポートも担い、東京から発電状況をモニタリングしている。
CIS型パネルは、結晶シリコン型よりも高温時の出力特性に優れているため、砂漠環境に適している面がある。また、結晶シリコン型に比べて変換効率が低い点も、設置面積にほとんど制限のないサウジアラビアではハンディになりにくい。
サウジアラビアは、電気代の削減や石油資源の温存のため、火力発電を再エネに切り替えていく計画を持っている。ソーラーフロンティアは、同国に向いたCIS型を現地生産することで、成長市場でのシェア獲得を有利に進める狙いもある。