「これまでの産学協同といえば、個別の研究開発での連携で、数百万円規模のものが多かった。今回は両者の経営層が関わり、ビジョンを共有して、1件あたりの投資額も大型化していく。我々としては初めての試みだ」(NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの新野隆氏)。
NECと東京大学は、戦略的なパートナーシップに基づく総合的な「産学協創」を開始すると発表した(発表資料、図1)。両者の研究者による共同研究に加え、研究成果の社会実装や、人材育成、制度設計にも踏み込む。なお東京大学は、現総長の五神真氏が掲げる「『産学連携』から『産学協創』へ」という方針のもと、日立製作所との間でも、共有したビジョンに基づき共同研究を進める「共同ラボ」を設立している(関連記事1)。
今回の取り組みの第一弾として、NECと東大は「NEC・東京大学フューチャーAI研究・教育戦略パートナーシップ協定」を締結。この協定は、まずは3年間実施し、その成果を評価して、その後の方針を検討する。予算の規模は公表していない。その傘下で実施する共同研究の具体例として、東京大学 生産技術研究所 教授の合原一幸氏が主導する「ブレインモルフィックAI技術」を挙げた。
脳の神経系を模倣したアナログ回路のハードウエアを開発し、ニューラルネットワークの処理を汎用のCPU上で実行する場合と比べて電力効率を1万倍以上に引き上げることを狙う(図2)。NECは、研究成果をもとにしたICを、自社の機器に組み込むなどの形で実用化する計画である。