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頭を動かした場合と動かさない場合の結果
頭を動かした場合と動かさない場合の結果
頭を動かさない条件(左)では音が3.6度移動しただけで気付いたが、頭を秒速60度で動かす条件(右)では音が17.7度まで移動しなければ気付かなかった(図:東北大学のプレスリリースより)
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頭の動かす速度による結果の違い
頭の動かす速度による結果の違い
秒速60度で頭を動かす条件と秒速30度で頭を動かす条件では、音が動いたことに気付き難くなるのに差がなかった(図:東北大学のプレスリリースより)
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 山梨英和大学、東北大学、東北学院大学の研究グループは2016年9月23日、聴取者が頭を動かしている最中に音を移動させると、頭を動かしていない時と比べて、音が動いたことに気付きにくくなることを発見したと発表した(ニュースリリース)。これは、音空間知覚が、聴覚情報のみならず自己運動感覚情報にも基づくことを示すもので、音空間知覚に関する脳情報処理の仕組みの解明につながる重要な研究成果と説明する。

 今回の研究では、音の動きを厳密に制御するために、頭部運動感応型3次元聴覚ディスプレー(virtual auditory display)というバーチャルリアリティー装置を使用して、聴覚が正常な人を対象に実験を行った。聴取者は、頭を移動する条件と移動しない条件の2つの条件で、動く音を聴き比べた。

 実験の結果、頭を動かさない静止条件では、音が3.6度移動すれば音が動いたことに気付いたが、頭を秒速60度で動かすことを求められた運動条件では、音が17.7度移動しなければ音が動いたことに気付かなかった。また、頭を秒速30度で動かした場合でも、秒速60度と同じように音が動いたことに気付き難くなることが分かった。

 人間の知覚の仕組みには、早さを優先すると正確さが損なわれる「トレード・オフ関係」がある。一方、今回の実験結果では、頭の動きの速度にはあまり依存せず、頭を動かしたこと自体によって音空間知覚の働きが抑制されることを示唆するという。

 今回の研究を発展させることで、近年普及しつつあるヘッドマウントディスプレー(HMD)を用いたバーチャルリアリティー装置やソフトウエアの設計で、より少ない情報量で同等の臨場感を持つ音場情報を実現する情報圧縮や制御、提示技術などに応用できる可能性があるという。

 今回の研究成果は、知覚心理学に関するオープンアクセスの国際学術誌「i-Perception」に2016年9月16日掲載された。