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試作機(中央)と処理用のパソコン
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薄型に向く(カメラを上部から見たところ)
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イメージセンサーの前に置くフィルム
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レンズレスカメラの構成
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モアレ縞を生成
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モアレ縞から撮像
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試作機での撮像イメージ(画面の右)と復元前の像(左)
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 日立製作所は、同社の推進する社会イノベーション事業に向けて、カメラを小型・低コスト化できる新しいイメージセンシング技術を開発した。より多くの場所を撮像してデータとして取り込み、AI(人工知能)などで解析して、価値ある情報として活用することを目指す。

車載用途や監視カメラで有効

 開発した技術は、既存のイメージセンサーと画像データの演算を組み合わせて、光学レンズを不要にする(「レンズレスカメラ」の検索結果)。レンズの代わりに数十μm厚などと薄いフィルムを使う。フィルムに同心円状のパターンを描いており、これと演算処理がレンズの代わりの働きをする。カメラの寸法とコストの大半を占めるレンズをなくすことで小型・低コスト化が見込める。特に、監視カメラや自動車搭載向けなどで、暗い環境でもよく見えるようにする大型イメージセンサーを使った場合に有効だ。大判センサー向けに直径が大きく厚い(多数枚の)レンズを薄いフィルムで代替できる。イメージセンサー表面とフィルムとの距離は1mm程度であり、レンズを使うよりも大幅な薄型化が見込める。

 撮像後に任意の場所にピント(焦点)を合わせることもできる。これは、フィルムを介してイメージセンサーで取り込んだデータから像を復元する演算手法に由来する。同社が採用したレンズレスカメラの手法では、一般には同心円パターンを描いた2枚のフィルムを一定の距離を置いて重ね、光を透過させることで得られる「モアレ縞」を使う。像を成している無数の光の点は、それぞれモアレ縞のピッチと向きに影響を与えるという。モアレ縞を2次元フーリエ変換することによって、光の位置などを復元できる。

後からピント合わせも

 今回、同社は2枚のフィルムのうちイメージセンサーに近い側を画像処理で代替した。すなわち、1枚のフィルムは1mm程度の間隔で配置しつつ、もう1枚のフィルムは実際には存在せず同心円状のパターンを撮像データに重ねて機能させている。モアレ縞からフーリエ変換で元の像を復元するためには、2枚の同心円パターンの直径をイメージセンサー表面で一致させる必要があり、これは対象物からの距離によって変わってくる。しかも一致した場合にはモアレ縞が直線になり、不一致の場合は湾曲する。今回の技術では、画像処理による同心円状パターンの直径を変えて、得られるモアレ縞が直線になるポイントを探す。ここが焦点の合った状態となる。この原理から、任意の場所の光によるモアレ縞を直線にすることが、その場所に焦点を合わせることになる。

 今回の手法は、2次元フーリエ変換という演算の高速化手法が確立している演算を使うために、高い演算能力は不要になる。同心円状パターン以外のパターンを描いたフィルムを使う場合と比べて必要な演算能力は1/300で済むという。動画をリアルタイム表示させる場合に必要な処理能力も既存のパソコン用マイクロプロセッサーや組み込みマイコンで間に合うという。