技術の広場
目次
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萩原正義のソフトウェア工学論(6)
モデルに内在する複雑さ
ここまで述べてきたように,1対1の原則を考慮することは非常に重要である。しかし実際にはほとんど実現できていない。これを解消するために,複数のドメインクラスに横断的なモジュール化を施す技術を用いてエンドユーザーの要求を表現することが求められる。
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萩原正義のソフトウェア工学論(5)
モデルに内在する複雑さ
概念モデルを定義したあとは,各工程ごとにそれを詳細化したモデルを作成する。このときに問題となるのが,元のモデルと詳細化後のモデルとの関係が複雑になることである。モデル間の関係を単純にして,概念から実装に向かって進められるモデルの具象化と詳細化を,容易に追跡できるようにしなければならない*5。
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萩原正義のソフトウェア工学論(4)
モデルに内在する複雑さ
前回は,ソフトウェア開発における工学的アプローチがなぜ失敗しているかを大局的な視点から検証した。さらに,開発プロセスにおける基礎的な問題点を明らかにした。今回は,モデル作成を題材に,そこに潜む問題点を見てみよう。
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間違いだらけのペーパーレス
10月6日の夕刻,情報化研究会のAさんから電話が入った。東京に出張で来たのだが,用件がすんだので立ち寄りたいとのこと。6時過ぎに来てもらうことになった。筆者がいるビルの最上階にはちょっとしたレストランがある。決して高級ではないが和洋のしっかりした料理とおいしいお酒が楽しめる。自慢は夜景のすばらしさ…
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特集「生体認証大ブレーク」(10)
実用段階で見えた三つの壁:運用,標準化,法制度
生体認証の三つ目の課題は法制度についてだ。具体的には(1)プライバシー確保や個人情報の扱い,(2)偽造によってなりすまされたときの対処,(3)性能の限界により誤認証が起こった場合の製造者の責任,(4)アクセシビリティの確保という四つのポイントがある。それぞれ対応する法律やガイドライン,JIS規格と…
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特集「生体認証大ブレーク」(9)
実用段階で見えた三つの壁:運用,標準化,法制度
生体認証の二つ目の課題である標準化では,異なるベンダーの装置で登録・照合した場合,いかに照合精度が落ちないようにするかに焦点が当たっている。
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特集「生体認証大ブレーク」(8)
実用段階で見えた三つの壁:運用,標準化,法制度
銀行のATMや空港など社会インフラに広まりつつある生体認証には,生体情報を使うがゆえの容易に解決し難い三つの課題が存在する。一つが本来の精度を出し切るような運用方法,二つ目が照合精度を保証しながら相互運用性を確保することや安全性を評価するための体制作り,三つ目がプライバシーや個人情報の扱いなど法的…
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特集「生体認証大ブレーク」(7)
焦点は現場での精度確保と脆弱性対策
ここにきて,生体認証の脆弱性の議論が活発になってきた。特に,他人がなりすまして認証されてしまう点が脅威となる。なりすますには三つの手口がある。一つが,生体情報を偽造すること。二つ目が,装置やサーバーからテンプレート(基準データ)を盗み出すこと。三つ目が強制的に認証させたり,本人が認証に協力し他人を…
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特集「生体認証大ブレーク」(6)
焦点は現場での精度確保と脆弱性対策
声や署名など動作で認証する方式は,他方式との併用を考慮した技術開発が始まろうとしている。なぜならこれらの方式は,単体での利用は難しいからだ。理由は三つ考えられる。まず,登録・照合時の動作が不自然だったり,抽出に時間がかかること。二つ目が,経時変化が大きいこと。三つ目が,慣習や文化の壁だ。
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特集「生体認証大ブレーク」(5)
焦点は現場での精度確保と脆弱性対策
虹彩認証では,装置の小型化および低コスト化が開発の焦点となっている。コストを下げるにはカメラの制御機構を簡素化する必要があるが,使い勝手が損なわれかねない。日本人は目が細い人が多く,カメラの位置合わせ精度が悪いとすんなり認証できないといった事態が起こる(図5)。
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特集「生体認証大ブレーク」(4)
焦点は現場での精度確保と脆弱性対策
銀行ATMで採用された静脈認証は,今,最も注目されている認証方式である。受け入れられたポイントは,指紋のように外部に情報が残留せず,センサーに触らずに済む点だ。しかし,認証技術としての信頼性の検証が必ずしも十分でないなど,課題が残されている。
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特集「生体認証大ブレーク」(3)
焦点は現場での精度確保と脆弱性対策
社会的認知度が高まるなか生体認証の技術開発は,かつてないほどの熱を帯びている。古くからある指紋や虹彩,中堅どころから突如最前線に飛び出した静脈,ブレークを狙う顔や声紋,署名など生体認証といってもさまざまだ(図1)。いずれもセキュリティ確保と利便性の両立を図り,安心・安全の社会を支え得る技術として,…
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特集「生体認証大ブレーク」(2)
セキュリティと利便性の両立で白羽の矢
こうして広がりを見せる生体認証は,セキュリティ確保および利便性の向上を実現する技術として,昔から研究されてきた。最近になって急激にブレークしたきっかけは,厳格な本人確認の必要性が多方面でぐっと高まったことだ(図1)。
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特集「生体認証大ブレーク」---目次
生体認証が本格的な普及期を迎えている。「生体認証の広がりは必然から来ている。一過性のブームでは終わらない。コンピュータの処理能力向上やセンサーのコスト低下によって,ようやく商品として提供できるレベルになったのが,今の状態。これから市場が立ち上がるだろう」(セコムIS研究所先端研究ディビジョンの池野…
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特集「生体認証大ブレーク」(1)
セキュリティと利便性の両立で白羽の矢
生体認証が本格的な普及期を迎えている。「生体認証の広がりは必然から来ている。一過性のブームでは終わらない。コンピュータの処理能力向上やセンサーのコスト低下によって,ようやく商品として提供できるレベルになったのが,今の状態。これから市場が立ち上がるだろう」(セコムIS研究所先端研究ディビジョンの池野…
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コントラストを大切に
9月17日土曜日の朝,いつものようにパソコンを立ち上げて情報化研究会のホームページの「間違いだらけのネットワーク作り」を書いた。ちょうど400回目だった。毎日やることを日課というが,毎週やることを週課というのだろうか。とにかく1997年9月から毎週書いて丸8年たったことになる。
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萩原正義のソフトウェア工学論(3)
ソフトウェア工学はなぜ失敗するか
開発対象となるシステムのアーキテクチャも,個別の開発プロジェクト内に閉じたものと考えてはならない。変化しない個所として切り出されたアーキテクチャを,複数プロジェクトで横断的に再利用することを考える。このため,個別の開発プロジェクトで一体的に扱うのではなく,アーキテクチャを扱う独立した開発プロセスが…
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萩原正義のソフトウェア工学論(2)
ソフトウェア工学はなぜ失敗するか
ソフトウェア開発の個々の要素について見ていくと,以上に述べてきた課題とは別の要因も明らかになる。今回はそのうち,ソフトウェアの開発プロセスについて考えてみよう。 ソフトウェア開発の方法論,開発プロセス,アーキテクチャの構築法,分類と体系化の手法は,時代に合わせて大きく変化してきたし,これからも変わ…
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萩原正義のソフトウェア工学論(1)
ソフトウェア工学はなぜ失敗するか
ソフトウェア開発が抱える問題を工学的なアプローチで解決しようとする試みが長く続けられてきた。しかし現状では成功しているとは言えない。現場での適用を難しくしている大きな要素がソフトウェア技術の進化の方向性だ。技術は実装に近い段階から生まれるためソフトウェア開発全般で活用するにはそれなりの時間がかかる。…
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生物指向コンピューティング---目次
現在のコンピューティング環境では,管理者が常に監視してシステムの調和をとっている。例えば機器が故障すれば交換し,障害復旧のプログラムを走らせる。しかしそうした人による管理は,構成要素が増えるにつれて難しくなる。