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エンターキナー,韓 芝馨

 韓国では,2006年に本格的な“無線ブロードバンド時代”が始まると予想されている。

 2006年4月には,固定通信事業者のKTが,WiMAXを使った無線ブロードバンド・サービス「WiBro」を開始し,移動体通信事業者のSKテレコムとKTFは,HSDPA(high speed downlink packet access)のサービスを開始する(関連記事)。2006年6月からは,固定通信事業者のHanaroテレコム, Dacom, Powercomm各社が,SKテレコムのWiBroネットワークを使ってMVNO(仮想移動通信事業者)として無線ブロードバンド・サービスに参入する。

 これらのサービス開始を控え,韓国では「KT-WiBro(KTによるWiBroのサービス)とSKT-HSDPA(SKテレコムによるHSDPAのサービス)のどちらが無線ブロードバンドを制するだろうか」といった議論が盛んに行われている。そこで今回の記事では,このコラムでWiBroの記事を連載した2004年9月以降,無線ブロードバンド・サービスをめぐってどのような出来事が起きているののかをまとめるとともに,WiBroやHSDPAの今後について予想してみたい。

“辞退者”が続出のWiBro事業

 以前の記事で書いたように,通信事業者各社はWiBro市場への参入を切望していた。具体的には,KT, SKテレコム, Hanaroテレコム, LGグループの通信3社(Dacom, Powercomm, LGテレコム)がWiBroの事業権を取得するべく競っていた。ところが2004年10月,LGグループの通信3社は突然,WiBro事業への新規参入を断念したと発表した。その理由として,「WiBro事業を開始するためには1兆ウオン以上の投資が必要だが,WiBroの需要や収益性は不透明なため」と発表した。

 韓国の情報通信部は,WiBroの事業権を3社の通信事業者に与えることを2004年9月に決めていた。事業権を狙っている通信事業者の中ではLGグループ3社は最も後発なため,事業権争いでは一番不利と目されていた。そのため事業権の決定前に,「事業権がなくても,他社のWiBroネットワークを借りればWiBroサービス市場には参入できる。その方が投資を最小限に抑えられる」と判断し,方針を切り替えたと伝えられる。

 このため2005年1月,WiBro事業権は残りの3社(KT, SKテレコム, Hanaroテレコム)に与えられた。4月初めには,周波数使用料を支払っていたKTとSKテレコムに周波数が割り当てられた(周波数使用料は1000億ウオン程度と伝えられる)。KTには2331.5~2358.5MHz帯の27MHzが,SKテレコムには2300~2327MHz帯の27MHzが割り当てられた。両社は今後7年間にわたって,この周波数帯を利用できる。

 一方,Hanaroテレコムは事業権を得たにもかかわらず,周波数使用料を支払っていなかった。このため,同社はWiBro事業を始める意思がないのではないかとの疑いの声が出始めた。そのような中,Hanaroテレコムは4月25日,WiBro事業権を返納すると発表をした。

 せっかく与えられた事業権をなぜ返してしまったのか。その背景には,Hanaroテレコムの最大株主である外資系投資会社の反対があった。投資会社では,WiBro事業を始めるにあたって必要な投資が,Hanaroテレコムの株価に影響を与えると判断したのだ。実際,その判断は正しかったようだ。WiBro事業権を返納すると発表した25日,同社の株価は7.36%上昇した。

 実のところ,周波数を割り当てられたSKテレコムも,WiBroサービスを積極的に推進したいとは考えていないと筆者は思う。移動体通信事業者であるSKテレコムとしては,従来の携帯電話市場や最近好調になっている衛星DMB(Digital Multimedia Broadcasting)市場を侵す恐れのあるWiBroサービスが,短期間で広まることを望んではいないと推測する。その証拠に,SKテレコムは,当面はWiBroサービスをユーザーへ直接提供しない。冒頭で書いたように,WiBroネットワークを他の通信事業者に貸すだけである。SKテレコムがWiBro事業権を得たのは,携帯電話市場への参入をもくろむKTをけん制するためだと考える。

 多くの通信事業者が切望していたWiBro事業権だったが,ふたを開ければ,WiBroサービスを積極的に推進するのはKT一社だけ,という事態になったのだ。

WiBro事業を積極的に推進するKT

 KTは2006年4月開始を予定している商用化サービスに向けて,WiBro事業を積極的に推進している。同社はまず,首都圏でサービスを開始する。そして2008年からは,全国84都市でサービスを開始する計画である。サービスを利用するための端末として,最初はノートPCやPDAを想定している。同社では,ノートPCやPDA向けのデータ・カードを提供する。その後,CDMAとWiBroに対応したスマートフォンを提供する予定である。将来的には,この“デュアル・スマートフォン”が主流になる見通しだ。

 また,CDMAとWiBroに加えて,同社の無線LANホットスポット・サービス「Nespot」にも対応したスマートフォンや,地上波DMBとCDMAおよびWiBroに対応したスマートフォンも計画していると伝えられる。サービス料金は,定額制と,一部サービスだけ定額の“準定額制”を用意する見通しだ。

 2005年6月には,WiBroサービスについて米Intelと議論したという。内容は,Mobile WiMAXやWiBro標準の統一,およびIntelからのWiBro対応チップの供給に関するものだった。また,2005年中には,IPv6対応WiBroサービス(IPv6 over WiBro)の試験サービスを実施する予定である。