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 トヨタ自動車は昨日(8月30日)、新しい販売網「レクサス」を開業した。高級車を専門に扱う販売チャネルである。多くの読者もメディアを通して、開業の模様をご覧になったことだろう。記者は先週末、一足早く内覧会に行ってきた。

 トヨタの狙いは、メルセデス・ベンツやBMWなど輸入車勢が市場を引っ張ってきた高級車市場に攻勢をかけることだ。記者は内覧会の前に7月の記者発表会で、内装など設備面の雰囲気はつかんでいたが、セールスコンサルタントと呼ぶ営業担当者の接客がどのようなものなのかを実際に感じてみたかった。レクサス流のおもてなしの模様を紹介しよう。

 レクサスは、これまでのトヨタブランドとは一線を画している。最上級のおもてなしを目指し、黒と白を基調としたデザインで高級感を演出する販売店、レクサスカレッジと呼ぶ専門の研修施設で教育を受けたセールスパーソンの配置など接客にも力を入れている。レクサスが販売する自動車にはETC(自動料金収受システム)を標準装備し、駐車場の入り口にETCの電波を受信する機械を設置。ETCの情報から顧客を識別し、担当のセールスパーソンが持つ携帯電話にメールで知らせてお出迎えするなど、これまでのトヨタの販売店とは異なる仕掛けを用意している。

 訪れたのは、東京・品川駅近くのレクサス高輪店。ガラス張りの2階建てで、3000平方メートルある旗艦店である。店内に入って、まず一般的な販売店と異なる点を見つけた。商談ブースの位置である。窓沿いにテーブルを配置するのが一般的だが、レクサスの配置は違う。金融機関で資産運用を相談するような個室がずらりと並んでいた。展示車を前にセールスパーソンからひととおり説明を受けたのちに、このブースに案内された。個室には、セールスパーソンが操作するノートパソコンと顧客に見せるためのディスプレーを備えている。顧客が座るのは革張りの椅子で、セールスパーソンと向かい合えるように配置。ゆっくりと話がしやすい作りになっていた。

 このブースで、液晶ディスプレーを使いながら接客を進めていく。数あるオプションのなかから、顧客がイメージする外装色や内装などをディスプレーに映し出し、好みに合わせた一台「マイレクサス」を作り上げていく。さらに、色見本が入ったワゴンカートがブースの前に横付けされた。色見本や革を手にとって確かめられることでイメージをつかみやすくしている。セールスパーソンによると、9月の生産分はほぼ完売。開業後には10月以降の販売予定分もすぐに売り切る自信があるという話ぶりだった。

 納車後にも来店を促す仕掛けがある。展示ブースの奥には、オーナーズルームと呼ぶ購入者専用のラウンジがあり、顧客が好みそうなビジネス誌やファッション誌をそろえて自由に利用できるスペースを用意している。一般的には、購入後にはオイル交換など用事がない限りディーラーに来店することは少ないが、ラウンジを設置することで顧客との距離を縮めようとしている。

 迎え撃つライバルも準備に余念がない。レクサス高輪の周辺には、輸入車の旗艦店も軒を連ねている。レクサス高輪店から信号一つ先にはBMWの旗艦店である高輪支店が、もう少し車を走らせると輸入車販売の老舗ヤナセ(東京・港)の東京支店がある。BMW高輪支店は、9月に改装し高級感の維持に余念がない。ヤナセも顧客からの相談を専門に担当するコンシェルジュを増員して顧客満足度の向上を目指している。

 レクサス開業により、高級車市場が拡大する可能性がある。高級車市場は輸入車の独壇場となっているのが現状である。市場規模は、日本自動車輸入組合によると数年間にわたり年間27万台で頭打ち状態が続いている。国産車で1000万円を超える車は数台である。それに比べて輸入車は選択肢が多く、富裕層は輸入車を買い求める傾向にある。レクサスブランドでは1000万円を超える高級車を投入するようだ。トヨタは、高級車市場がどのように推移するのか注目である。

(西 雄大=日経情報ストラテジー)