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検証(2) 無線特性の検証

図7●ZigBeeの無線特性
編集部が入居しているビルを使って測定した。二つの実験の結果をまとめた。一つはZigBeeの距離特性。ZigBeeノードを1対1で接続し,距離を5mずつ移動させながらどのように減衰するかを調べた。もう一つは無線LANとの干渉。無線LANで連続通信させながら,ZigBeeノードの位置を変えて測定した。測定では10回コマンドを発行し,返信が返ってきた割合で表した。無線LANがZigBeeの通信に大きく影響を与えるのが分かる。なお,無線LANは2442MHzを中心とする帯域,ZigBeeは2440MHzを中心とする帯域を使った。
図8●ZigBeeの無線LANへの影響
無線LANとZigBeeを近接させて,無線LANの速度を測定した。測定では無線LANを通信状態にしておき,ZigBeeノード間で1秒おきに90バイトのデータを送信した。この結果,3600ビット/秒程度のデータ量でも無線LANが大きく影響を受けることが分かる。ZigBeeと無線LANのチャネルは図8と同じ。( )内は空間を流れるデータ量。
図9●無線LANとZigBeeのチャネルのずれの影響
無線LANを7チャネル(2442MHzが中心周波数)に固定し,ZigBeeの周波数を変化させて,ZigBeeモジュール間の通信のパケット送信成功率を調べた。

 次に無線特性を調べた。

 最初にZigBeeノードを二つ用意し,1対1で通信できる距離を測定した。測定場所は,東京都千代田区にあるオフィスビル。幅35m×奥行き31mでL字型をしている。

 実験では,L字型のフロアの一端に1台のノードを固定して設置し,もう1台のノードを5mずつ離しながら電波の強さを計測した。電波強度の測定には,評価キットに付属したソフトの機能を用いた。送信電力は1mWに固定した。

 この測定結果が図7[拡大表示]の青字である。最も遠い測定点を除いて,すべての測定点で通信可能だった。信号強度がおおよそ−93dBm以下になると通信できなくなるようだ。固定ノードから直線に伸びる測定点を見ると,距離が離れるごとにその減り幅が増えている。20m地点が−67dBmで25m地点が−77dBm,そして−93dBmを限界信号強度と考えれば,直線で30m~35m付近が最大通信可能距離と推測できる。

無線LANでZigBeeの通信が不可に

 同じ実験環境で,無線LANの通信が連続的に発生するときの影響を調べた。移動側のノードから固定ノードに向かってパケットを2秒おきに10回連続して送信し,何回返信が返ってくるかを測定した。図7では10回中10回成功すれば100 %と表示している。無線LANとZigBeeの干渉を最大にするため,無線LANを7チャネル(中心周波数2442MHz),ZigBee側の中心周波数を2440MHzに設定した。

 結果は図7の緑字と赤字である。緑字が無線LANの通信がない場合,赤字が無線LANの通信がある場合のパケット送信の成功率である。無線LANが通信していなければ,ZigBeeの通信は100%成功するが,無線LANが通信していると成功率が下がる。距離が離れるごとに成功率は低くなり,−77dBmよりも信号強度が弱い場所では通信がまったくできなかった。

ZigBeeも無線LANに影響を及ぼす

 逆にZigBeeが無線LANに与える影響も調べた。

 実験では,無線LANアクセス・ポイントと無線LAN端末をそれぞれ1台,ZigBeeノードを6台用意。ZigBeeノードはすべてアクセス・ポイントの半径50cm以内に設置した。無線LAN端末はIEEE802.11g方式を使い,アクセス・ポイント経由で連続的にサーバーと通信させる。この状況でZigBeeが通信したときに,無線LANのスループットに与える影響を調べた。ZigBeeノードはホップせずに1対1でつながる場合と,4ホップしてつながる場合で調べた。ZigBeeと無線LANの中心周波数はそれぞれ2440MHzと2442MHzに固定した。

 評価キット付属のソフトウェアの制限上,ZigBeeのノードをホップなしで接続した場合,片方向の通信で1秒ごとに最大90バイトずつしか送信できない。つまり,720ビット/秒である。6台のノードを使って4ホップさせると,同じパケットが空間中に5回流れるためデータ量は秒当たり3600ビット。ZigBeeは反対方向からも同時に送信できるので,データ量はその倍になる。つまり1組当たり1440ビット/秒,4ホップで7200ビット/秒になる。

 結果はZigBeeがホップなしで通信している場合は,無線LANに影響しなかった。4ホップした場合には,片方向だけの通信でも大きな速度低下が起こった(図8[拡大表示])。ZigBeeの速度は厳密に測定する手段がないが,体感的には特に速度低下はなかった。

 このようにZigBeeによって無線LANが大きく速度を落とすのは,無線LANでキャリアセンス機能が働いているためだと考えられる。キャリアセンスとは,フレームを送信する前に,電波の状況を確認し,もし誰かが通信していれば一定時間たってから再度通信する仕組みである。再度送信しようとする際も通信を検知したら,また一定時間待つ。

 ZigBeeが連続的に通信していると,無線LANはチャネルが別の端末によって占有中だと判断して,通信を待つのだろう。

10MHz以上離せば干渉しない

 最後に,無線LANの周波数とZigBeeの周波数をどの程度離せば干渉しないのか調べた。

 無線LANの中心周波数を2442MHzに固定し,ZigBeeの中心周波数を5 MHzずつずらして,通信できるかどうかを調べた。ノード間の距離は20mにした(図7の−67dBmの地点)。無線LAN通信時にZigBeeがぎりぎりでつながる条件だったからだ。

 結果は,図9[拡大表示]のように,無線LANの中心周波数から前後10MHz以内で影響はあるが,それを外すと100%通信できるようになった。これは予測通りの結果と言える。無線LANの周波数-信号強度分布(スペクトラム・マスク)を見ると,中心周波数から前後9MHz程度が信号が強い範囲だからである。

 一方,ZigBeeから無線LANへの影響は残念ながら評価できなかった。ZigBeeのスペクトラム・マスクは中心周波数から前後に1MHz程度広がる形をしている。このことから,無線LANとZigBeeの中心周波数を10MHz以上離せば無線LANへの干渉が起こらないと考えられる。