固定通信と移動通信の両方を手がけるベル・カナダは,合計で約2600万のユーザーを抱える。1997年からADSLサービスの提供を始め,2004年にIP電話サービスを開始。2005年3月末時点で同社のADSLは190万ユーザーまで伸びた。今後は,FTTN方式で光ファイバの敷設も進める。 日本はADSLや光ファイバ,IP電話が世界に先駆けて普及したブロードバンド先進国と称されることが多くなった。カナダでもブロードバンドやIP電話の普及が始まっており,日本に匹敵する先進ユーザーが出始めている。中には,むしろ日本よりも進んでいる事例さえある。 こうした事例がカナダ最大の都市トロント近郊にもいくつかある。(1)IP電話と高度なアプリケーション連携を実現した投資会社のリチャードソン・パートナーズ・フィナンシャル・リミテッド(RPFL),(2)自営のMPLSネットワークを構築しているカナダ最大の“空の玄関”トロント・ピアソン国際空港,(3)ブロードバンドを使った先進的な遠隔診療を提供する医療機関ノース・ネットワーク,(4)数千台のIP電話を市の施設に導入したトロント近郊の自治体ミシソガ市——である。 リチャードソン・パートナーズ・フィナンシャル・リミテッド(RPFL)RPFLは,新興の資産運用会社。西はバンクーバーから東はモントリオールまで,カナダを横断する8拠点をベル・カナダのIP-VPNサービス「BELL VPNe」で接続し,約340台のIP電話機を導入した(図)。全社員へのIP電話導入とアプリケーション連携で,業務効率の向上や顧客とのコミュニケーションの円滑化に成功している。 具体的には,(1)ボイスメール,(2)ノート・パソコンにインストールしたソフトフォンによる“どこでも電話”,(3)着信時にIP電話のディスプレイに顧客情報をリアルタイムに表示,(4)IP電話のディスプレイへの動画ストリーミング配信——といったアプリケーションや機能をIP電話システムで利用中である。 IP電話はユーザーIDとパスワードがあれば,どこの拠点のIP電話機でも自分用にカスタマイズが可能。ノート・パソコンとソフトフォンを組み合わせることで,カナダ国内/国外を問わず内線電話を利用できる。場所を問わずにコミュニケーションや情報収集を可能にして,どこでも業務ができるようにしている。 RPFLのシュー・デバーノ執行副社長兼COOは,「IP電話とこれらのアプリケーションのおかげで,冬の間はトロントを離れ,暖かい米国のマイアミで仕事ができる。どこにいても普段どおりに業務が可能」と,日本ではなかなか見られない大胆な使いこなしを披露する(図の写真上)。 「業務効率向上にはIP電話が不可欠」RPFLの設立は2003年5月。同年11月の開業に向け,設立直後からネットワーク構築と電話システムの選定に入った。当初はPBXを使う通常の固定電話とIP電話を比べたが,「業務効率を上げるにはIP電話しかない」(スタンリー・エング上級副社長兼CTO)と判断。内線はIP化し,外線だけ加入電話とした。 IP電話システムは,米シスコシステムズの製品を採用。固定電話に加えて無線IP携帯電話の「Cisco Wireless IP Phone 7920」も導入している。「一般的に,通常の金融機関の通信コストは全売上高の1%程度。しかし,RPFLは売上高の0.075%以下にコストを押さえた」と,エングCTOはコスト削減効果にも満足する。音声データは8kビット/秒のレートに圧縮したが,IP-VPN網内では音声にQoSをかけており音質に問題はないという。 IP電話サーバーを異なる拠点に分散するだけでなく,各拠点のアクセス回線なども2重化して信頼性を確保している。「2006年にはビデオ会議システムを導入する」とエングCTOは今後の取り組みに意欲を見せる。
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※本記事は日経コミュニケーション2005年8月1日号からの抜粋です。そのため本文は冒頭の部分のみ,図や表は一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。 |
IP電話で“どこでもオフィス”
ブロードバンドで遠隔医療も
トロントの先進4ユーザー
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