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千村 保文 沖電気工業IPソリューションカンパニー バイスプレジデント 兼 IP電話普及推進センタ長
新井 英樹 沖電気工業IPソリューションカンパニー ソリューション開発本部 キャリアNWソリューション開発部課長

110番などの緊急通報は,今のところIPセントレックスの標準的な機能ではありません。一部事業者が先行的に実現していますが,通信業界全体での取り組みが求められていました。これを受けて総務省は,緊急通報を実現するための方策案を1月に策定しました。

 緊急通報とは110番(警察),119番(消防),118番(海上保安庁)への電話のことです。これらの番号をダイヤルした時に,発信場所を管轄する警察,消防,海上保安庁の機関につながる必要があります。

 従来の加入電話では当たり前の機能でしたが,IP電話/IPセントレックスではまだ標準的な機能ではありません。一部の事業者は既に緊急通報に対応していますが,通信業界全体で見れば,対応しているのはまだ少数派です。多くのIPセントレックスのユーザーは,緊急通報のために加入電話回線を残しているのが現状です。

 総務省の情報通信審議会は,IP電話で緊急通報を実現する技術仕様を以前から議論していました。そして,この1月に同審議会は「IPネットワークにおける緊急通報等重要通信の確保方策案」を発表しました。この方策案では,緊急通報のための細かな技術仕様に言及しています。今後は,同方策案に基づき,多くのサービスが緊急通報に対応していくでしょう。

0AB~J番号では緊急通報対応が義務

 「03-XXXX-XXXX」といった0AB~J番号が割り当てられた電話端末と,「050-XXXX-XXXX」といった050番号が割り当てられた端末では,緊急通報の扱いが異なります。0AB~J番号では,緊急通報は必須です。電話番号を管理する総務省は,緊急通報ができない場合には0AB~J番号の割り当てを許可しません。現在,0AB~J番号を持つIPセントレックス端末の多くは,加入電話回線を残しておくことで緊急通報に対応しています。

 一方,IP電話専用の電話番号である050番号の端末では,緊急通報は必須ではありません。

 IPセントレックスでの緊急通報の実現方法も0AB~J番号と050番号では異なります。これは0AB~J番号の端末は移動を許可されていないのに対し,050番号は端末をどこに持ち運んで使ってもよいとする総務省の方針の違いからくるものです。今回は0AB~J番号での緊急通報の仕組みについて説明します。

呼び返しや通報者の位置特定などが要件

図1 IP電話からの緊急通報に必要な技術要件
図2 位置情報はXML文書で指令台に送信する 電話番号,郵便番号,住所コード,住所,名前の情報が含まれる。

 0AB~J番号のIPセントレックスで緊急通報を実現するには,次の要件を満たさなければなりません(図1[拡大表示])。(1)警察/消防/海上保安庁の指令台から呼び返し(逆信)ができること,(2)緊急通報を網内で優先的に取り扱うこと,(3)通報者の位置が特定できること——などです。これは加入電話で緊急通報を実現するための要件とほぼ同じです。ただ,加入電話では要件になっている「回線保留」が含まれていません。これはパケット通信を行うIP電話には回線という概念がないからです。そこで回線保留については,(1)の呼び返し機能で代替します。

 (1)の呼び返しはIP網内に「呼接続保持装置」を設置して実現します。同装置は通報者と指令台の通話状態を監視します。通報者が通話を切断しても,一定時間経過後に,同装置がIP網内の呼制御サーバーに通報者への呼び返しを命令します。

 (2)はIP網内のルーターで音声パケットを優先制御して実現します。これはDiff-servなどのQoS技術を用いることになると思われます。

位置情報の送信にはXMLデータを利用

 (3)は緊急通報実現で肝となる部分です。この機能がないと,事件現場や最寄の警察署などを迅速に特定できません。

 位置の特定にはIP網内に,端末の電話番号と加入者の名前,住所,住所コードを管理する「加入者情報データベース(DB)」や,警察/消防/海上保安庁の各指令台が管轄するエリアと指令台の電話番号を管理する「接続先情報DB」,指令台に配備する「位置情報受信装置」などを設置して実現します。各データはXMLのフォーマットで,HTTPによって送信されます(図2[拡大表示])。なお,現在,指令台の端末はアナログ回線かISDNで加入電話網につながっていますが,位置情報受信装置だけは専用のデータ網に接続されています。なお,今後は指令台端末と位置情報受信装置のIP化が進み,指令台の通信回線もIPに一本化されると思われます。

 これらのDBと装置による実際の緊急通報は次のような流れになります。まず,呼制御サーバーは緊急通報のパケットを受信すると,加入者情報DBに接続し,発信者の住所コードを調べます。次に接続先情報DBに接続し,発信者の住所コードから,その所在地を管轄する指令台の電話番号を求め,発信します。

 指令台の担当官は必要に応じて端末の位置情報を取得できます。位置情報は,通報者の端末の電話番号をもとに加入者情報DBを検索すれば分かります。