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 2005年4~ 6月期の業況判断指数は業況DIはやや回復、売り上げDIと粗利益率DIは大きく伸びた。さらに、ユーザー企業のIT投資意欲も上昇するなど回復基調が見られた。



図1●ITサービス業界の業況DIの推移

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 2005年4~6月期の業況DI(ディフュージョンインデックス)は、前回(2005年1~3月期)の10から今回は12とやや上昇した。前回の見込みでは15になると期待されたが、2ポイントの増加にとどまった。前回に比べて伸びは鈍ったものの、回復基調は続いている。

 売り上げDIと粗利益率DIは堅調に伸びている。特に売り上げDIは前回の14から今回は29へと急伸した。前回の調査では売り上げDIが16ポイントも急落しており、今回はV字回復を果たした。粗利益率DIも前回の4から今回12へと上がった(図1)。

 ユーザー企業の投資意欲も全体としては高まる傾向にあり、「高まっている」という回答が前回29%だったが、今回は35%に増えた(図5)。投資意欲はこの1年間、後退もしくは横ばいで推移してきており、今回の調査でようやく状況が好転した。投資意欲を引っ張っているのは、情報漏洩対策で商談が急増したセキュリティと、アウトソーシング志向を反映した運用関連の商談である。

 調査結果の自由意見欄でも、「個人情報保護法の影響から情報セキュリティ関連でやや活発な投資意欲が見られる」(ソフト会社)、「セキュリティ関係の投資が増加傾向にある」(販売会社)といった回答が見られる。運用関連では、「アウトソースサービスの比率が高まっている」(ソフト会社)、「情報処理サービス、運用サービスは堅調に推移しており安定している」(ソフト会社)、「ITの運用関連のビジネスが増加している。今後もその傾向が続くと思われる」(販売会社)となっている。

 「個人情報保護法関連のセキュリティ商談は今年も好調が続く」(ネットワークインテグレータ)と見るなど、セキュリティを軸にした好景気を期待するソリューションプロバイダは多い。ただし、「セキュリティ商談が多いことには変わりないが、伸びは明らかに鈍っている」(セキュリティベンダー)と懸念を表すソリューションプロバイダも出てきた。「セキュリティとストレージ以外の分野では、投資意欲が活発な印象はあまりない」(ソフト会社)という現状もあり、新たな売れ筋ソリューションを見つけることが緊急の課題だ。

 2005年7~9月期の見込みでは売り上げDIは横ばいになるものの、業況DIと粗利益率DIがさらに上昇すると予想する。ソリューションプロバイダの方針が、売り上げ重視から利益重視へと確実に転換してきたことの成果と言える。

ソフト会社は業況DI低調

図2●業態別に見た業況DIの推移

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 図2では、ハード/ソフトなどの商品販売が主体の「販売会社」とソフト/サービスなどの開発・提供が主体の「ソフト会社」など業態別に分けて、それぞれの業況DIの推移を示した。販売会社の業況DIは前回調査の見込み通り大きく伸びたのに対し、ソフト会社は苦戦が続く。全体の業況DIは前回の10から今回は12になっており、販売会社の業況DIも前回の13から今回は25に大きく増えた。だが、ソフト会社は前回の9から今回は8とわずかながら下がってしまった。

図3●業形別に見た売り上げDIと粗利益率DIの推移

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 業態別に細かく売り上げDIと粗利益率DIを見たのが図3である。ソフト会社の動きを見ると、売り上げDIは前回の10から今回は29へと一気に19ポイントも上昇した。粗利益率DIも前回の4から、今回は15になるなど好景気の兆しが見られる。前回の調査ではそれぞれ20ポイント、6ポイント指数がダウンしており、ここでもV字回復が見られた。販売会社の売り上げDIは前回の25から今回29に上がったが、粗利益率DIは横ばいだった。ソフト会社、販売会社ともに売り上げDIの2005年7~9月期の見込みは横ばいになると予想する半面、粗利益率DIはともに上昇するとみている。この指数の推移に、売り上げを伸ばすことより利益増を重視するソリューションプロバイダの志向が明確に表れている。

図4●業種別のハード/ソフトの売り上げDIとサービスの売り上げDIの推移

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 ソフト会社や販売会社の業種別に、ハード/ソフト部門の売り上げDIとサービス部門の売り上げDIの推移をそれぞれ示したのが図4である。いずれも、サービス部門の売り上げDIは堅調に伸びている。一方で、ハード/ソフト部門では、販売会社の売り上げDIが見込みを上回る大幅な伸びを示したのに対し、ソフト会社の売り上げDIはさらに落ち込んだ。前回はマイナス3だったが、今回はマイナス14になった。あるソフト会社からは「ソフトウエア開発の利益率は改善してきているが、システム商品・製品販売は競合が厳しい状況だ」という意見が出た。

 販売会社のサービス部門の売り上げDIは、前回の25から今回は50と大幅に上昇、回答会社の半分が「増えた」と回答し、「減った」という回答は1社もなかった。販売会社のハード/ソフト部門の売り上げDIも、前回のゼロから今回は21に急騰した。特に、販売会社はハード/ソフト部門とサービス部門の売り上げDIはともに、前回調査での見込みを大幅に上回っており、各社が想定した以上に売り上げが回復している。

 その一方で、ソフト会社のハード/ソフト部門の売り上げDIは、マイナス14ポイントと前回に比べ8ポイントも悪化した。ただし、ソフト会社のサービス部門の売り上げDIは前回32から今回36へと好調に推移しており、売り上げ全体のDIも上昇に転じている。これは、ソフト会社各社が事業の中心をハード/ソフト部門からサービス部門にほぼ移行し終えた結果とも取れる。ハード/ソフト部門の売り上げが、企業全体の業況に与える影響は縮小している。

投資はしても単価は引き下げ

図5●ユーザー企業の情報化投資意欲に対する見方の推移

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 ユーザー企業のIT化投資意欲を見ると、「国内景気の持ち直しに伴い、ユーザー企業が競争力強化、業務効率化を図るためにITに対する需要が顕在化している」(ソフト会社)というように回復基調にある。業種別ではソフト会社の「高まっている」が前回は23%だったが、今回は32%に上がった(図5)。「低くなっている」は、前回の7%から2%になった。販売会社では「高まっている」は前回の46%から、今回は42%にやや減った。ただし、「低くなっている」は前回が4%だったのが、今回はゼロになった。

 ユーザー企業のなかでも、業種によって投資意欲の回復具合に差があるという声も多い。例えば「金融業や百貨店・小売業での投資意欲は強いが、サービス業が厳しい」(ソフト会社)。「投資意欲はやや上昇傾向にあるものの、上昇の度合いは業種によって開きがある」(ソフト会社など複数社)といった意見だ。

 さらに、投資意欲が回復したからといって、手放しでは喜べない。海外のソリューションプロバイダを含めた競争がますます激化し、個々のソリューションプロバイダの売り上げアップにはつながらない可能性があるからだ。「先行きの景気回復に不透明感が漂う。さらに、同業他社との競争は激しく、お客様のコストダウンの要請は、依然として続いている」(販売会社)「IT投資にはっきりとした明るさが見えない。粗利益率の低下、単価の下落は低成長市場においては仕方がないとはいえ、厳しいものを感じる」(販売会社)という。オフショア開発に流れるユーザー企業は昨年以上に増えており、競争の激化、単価の下落はさらに進むと予測される。 

調査の概要
 「ITサービス業の業況調査」は、企業向けIT市場の景気動向のすう勢を把握することを目的に、本誌が四半期ごとに実施しているアンケート形式の調査。今回は2005年6月上旬に、上場しているシステムインテグレータやディーラー、それらに準じる会社約120社に対しアンケートを依頼し、89社から回答を得た。このうち、システムインテグレータや保守・サービス会社などサービス販売を主体とする「ソフト会社」が65社で、コンピュータ商社やディストリビュータなど製品販売を主体とする「販売会社」が24社だった。

 業況判断の指数となる「DI(ディフュージョンインデックス)」は、回答者の感覚的な判断を知る目的で使われる数値で、日本銀行が四半期ごとに発表している景気判断調査「日銀短観」でも使われている指標。本調査では、業況、売り上げ、粗利益率のそれぞれについて「良い」または「増える/増えた」と回答した企業の割合から「悪い」または「減る/減った」と回答した企業の割合を差し引いて算出している。

出典:2005年7月15日号 58ページ 日経ソリューションビジネス

記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。

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