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 ルクセンブルクSkype Technologiesの躍進が続いている。この8月末に2周年を迎え,ソフトウエア「Skype」のダウンロード件数は1億5000万を突破した。9月1日にはドイツ第3位の携帯電話事業者E-Plusと提携したと発表。さらに中国のポータル大手との合弁会社設立など世界戦略も着実に進めている。

 当初パソコン同士の通信ソフトに過ぎなかったSkypeだが,今ではさまざまなサービスを展開。もはや一部のマニアだけのものではなくメインストリームへ躍り出ようとしている,などと米メディアが報じている。今回は同社の最新動向についてレポートしてみよう。

サービスの拡充続けるSkype

 本コラムでSkypeについて触れたのは今年3月。同社が一般電話からの着信サービス「SkypeIn」を始めたころだ。その時点のSkypeのダウンロード件数は1億弱。これが9月8日現在では1億6000万を超えている。Skypeの登録ユーザー数は当時3100万人だったが,今では5100万。有料サービスのアカウント数も200万を超えるまでになった(Skype社の発表資料)。

 こうして同社がユーザー数を増やしているのには理由がある。サービスの拡充だ。例えば有料サービスの第1弾となった一般電話への発信サービス「SkypeOut」(関連記事)では,その後通話料金を下げした。格安一律料金を適用する国/地域の数も増やした。SkypeIn(関連記事)では当初,付与される電話番号が4つの国/地域のものに限られていたが,今では北欧各国の番号を加えて8つの国/地域。また同サービスで取得できる電話番号の数は当初3つだったが,今では10個になっている。これらの変更は特に大きな発表がないまま行われた。Skype社はこの短期間に,着々とサービスを拡充していたのである。

 同社のサイトを見てみると,変化はまだあるのに気付く。例えば有料サブスクリプション形式で提供する「Voicemail」はベータから正式サービスに移行した。ユーザーがSkypeをカスタマイズできるようにする「Personalise Skype」(有料)や,Internet Explorer(IE)/Outlook上にSkypeの機能を追加する「Skype Toolbar」(こちらは無料)も提供開始。最新のWindows版ベータでは着信通話を携帯電話などに転送する機能も追加した(Windows版Skypeのサイト)。そして,公衆無線LANサービスと連携する「Skype Zones」も始めた。

公衆無線LANで盛り上がるSkype

 実はこのSkype Zoneこそが同社の現在取り組んでいる大きな施策の一つで,ユーザーの増大に大きく貢献していると筆者は考える。Skype Zonesは,米Boingo Wirelessとの提携で始めたサービスである。2.50ユーロ(2.95米ドル)で2時間のサービス,あるいは月額6.50ユーロ(7.95米ドル)で使い放題のサービスを申し込むと,世界各地のアクセスポイントでWi-Fi接続できるようになり,Skypeが自由に使えるというわけだ。

 Boingo社は無線LANローミング・サービスの会社。アクセスポイントを運営する事業者と交渉し,各事業者を自社のローミング・グループに加えている。こうして世界各地で無線LAN接続を提供するサービスを自社ブランドで販売。ユーザーにはサービス・エリアの検索/閲覧/接続ソフトを配布している。Skype社とBoingo社は,共同ブランドのソフト「Skype Zones - Powered by Boingo」をユーザーに提供しており,これを使って全世界1万8000カ所のアクセスポイントが利用できるようにしている。設置場所は空港/ホテル/カフェ/小売店などさまざまで,日本では成田空港や幕張のホテルなどで利用できるという(Skype社のWebサイト)。

 もっとも,Skypeはインターネットにさえ接続していれば使えるので,何もPowered by Boingoでなくてもよいことになる。Skype-Boingoはあくまでもマーケティング戦略なのだ。例えばSkype社はドイツE-Plus社と同様の提携をした(関連記事)。こちらはパソコンに通信カードを挿して,携帯電話と接続。E-Plus社の定額データ通信サービスでいつでもどこでもSkypeを使えるようにするというものである。

 海外ではソフトフォンを使って,自宅/オフィス以外で電話しているという光景が当たり前になっている(関連記事)。こうしたユーザー層の広がりと無線事業者との提携がSkypeの利用者を増やしていると考えられるのだ。

米IntelもSkypeを支援

 この状況を後押しするかのように,米国などでは無線LANの公共サービス化計画が持ち上がっている。例えばフィラデルフィア市の巨大無線LANホットスポット計画(関連記事)。サンフランシスコ市も同様の計画を明らかにしている(関連記事)。こうした行政による無線インフラ計画には,米Intelなども参加/協力している(Intel社の発表資料)。Intel社はCentrinoの次期版「Napa」を推進するのが狙いのようだが,こうした大手企業の動きも手伝って,今後世界各地で広範囲に利用できるメッシュ型の無線LANが広がりそうである(関連記事)。

 さらにIntel社は企業ユーザーのIT環境支援策の一環として,Skype社と協力してIntelプラットフォームで利用できる強力なVoIPアプリケーションを提供するとも発表している(発表資料)。米メディアによれば,両社は研究開発の分野で提携したとのことだ。その目的は,ソフトウエア技術/コーデック技術とデュアルコア・プラットフォームを用いたIntelプラットフォーム上でクライアント・ソフト(Skypeのこと)をよりスムーズに動作させることという(米CNET News.comの記事)。

 日本では,ライブドアがSkypeのディストリビューション・パートナーとなっており,折しも同社は公衆無線LANの本サービスをまもなく始める(関連記事)。これからは日本でも街のあちらこちらで"Skypeしている"光景が見られるかも知れない。

Skypeの懸念材料とは

 こうして見てみるとSkype社は絶好調のようだ。有料サービスを拡充し着実にユーザー数を増やしているし,無線LAN事業者との共同マーケティングも順調だ。中国TOM Onlineと提携するなど世界展開も怠らない(関連記事)。SkypeサービスをWebサイトや各種アプリケーションに組み込めるようにするための技術情報も公開(関連記事),さらにはSkypeのテレビ電話化計画も進めているという(米CNET News.comの記事)。

 同社は非公開企業のためIR活動は行っていないが,アナリストらの推測によるとその年間売上げは60億~100億ドル。ある調査会社の試算では,このままSkype社が活動を続けると2008年には固定/携帯事業者が5%~10%の売上げ減を余儀なくされるという。これは既存事業者にとって脅威である。Skype社は今回初めて携帯電話事業者E-Plusとの提携を実現したが,E-Plus社のように考える事業者は多くはない。例えばVodafone Germanyは,2007年からSkypeをはじめとするVoIPをブロックする計画という。フランスのSFRも今年3月にVoIPのブロック計画を発表している(Ovum.comに掲載の記事

 E-Plus社との今回の提携は,今後,携帯電話機へSkypeが組み込みこまれることの布石などといわれている(関連記事)。確かに,同社はSkype組み込みの携帯端末を米Motorolaなどと開発中という(発表資料)。しかし果たしてそれを受け入れるキャリアがあるのか,あるいはどのような形で登場してくるのか,今のところ未知数である。

 Skype社にとっての懸念材料はこれだけではない。例えば,米Yahoo!が6月にIP電話の米Dialpadを買収しており(関連記事),米MicrosoftもVoIPの米Teleoを買収した(関連記事)。さらに米GoogleもIMサービスを始めている(関連記事)。こうしたライバルの台頭で今後の勢力図がどう変化していくのか大いに危惧される。

 Skype社はSkypeOutやSkypeInなどでソフトフォンからの脱却を図っており,今のところ優位な立場にあるのかも知れない。しかし米国ではVoIPサービス・プロバイダへの緊急電話サービス(E911)の義務付けが始まっている。単なるソフトフォンではなくなるSkypeには今後,こうした規制が待っているかも知れない。さらには,Rupert Murdoch氏の米NewsがSkype社の買収に動いたという話(Silicon.comに掲載の記事)や,米Googleが調達した資金でSkype社を買収するのではないかと噂も流れた。今後,規模が大きくなればなるほど,こうした買収の危険にもさらされることになる。

 既存通信事業者による締め付け,大手ライバルの台頭,当局による規制,そして巨大企業による買収——。躍進するSkype社には行く手をさえぎるさまざまな難題が待っているようだ。

■著者紹介:こくぼ しげのぶ
ニューズフロント社長。1961年生まれ。98年よりBizTech,BizIT,IT Proの「USニュースフラッシュ」記事を執筆。2000年,有限会社ビットアークを共同設立し,「日経MAC」などに寄稿。2001年,株式会社ニューズフロントを設立。「ニュースの収集から記事執筆・編集など,IT専門記者・翻訳者の能力を生かした一貫した制作業務」を専門とする。共同著書に「ファイルメーカーPro 職人のTips 100」(日経BP社,2000年)がある。

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