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 かねてから噂のあった,米アップルの音楽再生ソフト「iTunes」を組み込んだ携帯電話機がついにその姿を現した(関連記事1)。米モトローラの「ROKR(ロッカー)」である。残念ながらネットワーク・ダウンロードの機能は無い。これも残念なことに,GSM/GPRS携帯電話機だから,そのままでは日本で使えない。

 とはいえ,無視できない存在ではある。「iPod Shuffleを組み込んだだけ」という意見ももっともだが,日本では使えない携帯電話がこれほど話題になっている理由は何だろうか。音楽再生機能を持つ携帯電話なら,以前にもあったし,今でもあるから別に珍しくもない。とすると携帯電話としてよりも,iTunes端末としてのポテンシャルに関心が集まっていることになる。

 関心の高さは,この8月末に日本でもいよいよ始まった音楽配信サービス「iTMS(iTunes Music Store)」の熱まだ覚めやらずということもあるだろう。何しろこのサービスは開始4日間で100万ダウンロードを突破。競合サービス各社が対抗値下げを敢行するなど,それまでさざ波すら立たなかった日本の音楽配信市場を大いに活性化してくれた。

 また,最近の携帯電話でウケた機能といえば,フルブラウザやPDFリーダーといったパソコンから移植された機能が目立つ。「パソコンで出来ることを携帯電話でも」というニーズが高まっているとすれば,同じくパソコンからの移植機能であるiTunesも,その類にもれない。何といっても4500万台規模の国内携帯電話市場は9割近く*1が買い替え市場。新たなアイデアを受け入れる余地は大きい。

*1 2004年度の出荷台数4477万3000台に対して,新規ユーザーは507万6500人だった。電子情報技術産業協会(JEITA)と電気通信事業者協会(TCA)の統計資料から。

 iTunes携帯電話の国内デビューは現時点で未定だが,仮にそうなれば,米国発のアイデア携帯電話としては久々の日本上陸ということになる。

 最初の上陸は1989年10月の超小型軽量端末「マイクロTAC」にさかのぼる(メーカーが同じモトローラという点も興味深い)。当時,日本の報道では日米貿易摩擦の象徴ということもあって「黒船」という文字が躍った。大ヒットしたマイクロTACに対抗すべく,日本メーカーは奮起して,小型軽量化競争に拍車がかかった。その余勢をかって北米をはじめとする世界に乗り出していった。

 筆者はiTunes携帯電話が「黒船再来」になってほしいと期待している。携帯電話の時代がアナログからディジタル,そして3Gへと移るにつれ,世界市場における日本の携帯電話メーカーの存在感はすっかり薄れてしまった。日本メーカーは国内市場に閉じ込められ,「鎖国」状態になってしまっている。

 だからこそ,iTunes携帯電話を2度目の黒船になぞらえ,世界に通用するアイデアを持った携帯電話を作り出し,再び世界市場に飛び出してもらいたい。これが最後のチャンスかもしれない。