データの信頼性を高めたサーバー型
そのポイントの一つは,ディスクに障害が発生した場合の信頼性だ。単独のパソコンでディスクが故障しても大変なのに,複数の人で共有するとなるとディスクが故障した場合の影響は比較にならないほど大きい。そこで,複数のディスクを搭載しRAIDと呼ぶ手法を使って障害が発生した場合でもデータがなくならないようにしているのがサーバー型NASだ。
一口にRAIDといっても,実はいくつかの方式がある。よく使われているのはRAID-0,RAID-1,RAID-5の三つ(表2[拡大表示])。だが,サーバー型のNASがどれでもこの3種類の方式から自由に選べるわけではない。製品によって初期出荷状態の方式が決まっていたり,利用できるRAIDの方式が限定されている(表3[拡大表示])。これら3種類の特徴を正確に理解して製品を選択したい。
利用したいRAIDで製品を選ぶ
まず,RAID-0は,データを細かいブロックに分けて複数のディスクに順番に書き込む方式だ。このため,読み書きは高速になるが,どれか一つのディスクが故障すると全体に影響してしまい,信頼性の向上には役立たない。このRAID-0の方式は「ストライピング」と呼ばれる。
RAID-1は,まったく同じ内容を二つのディスクに書き込む。すべてのデータを2重化しているため,もし片方のディスクが故障しても,もう片方のディスクからデータを読み出せる。耐障害性は高いが,利用できるディスクの容量は実際の半分になる。このRAID-1は「ミラーリング」と呼ばれる。
最後のRAID-5は,データを細切れにして複数のディスクに分散して書き込む。このときに,どれか一つのディスクに,故障した際に復元情報として使うパリティを書き込む点がRAID-0と異なる。パリティとは,関連するデータの組み合わせで計算された値のこと。この値がわかれば,どれか一つのデータがわからなくなっても,逆算して元のデータを復元できる。
RAID-5を利用して冗長化するには,最低でも3個以上のディスクが必要になる。ただし,どんなに搭載ディスクが増えてもパリティとして使うディスクは1個で済むため,使えるディスク容量は実際のディスクの(n−1)個分となりRAID-1よりも効率的である。例えば,250Gバイトのディスクを3個使った場合に利用できるディスク容量は500Gバイトになる。4個なら750Gバイトの容量が使える。
なお,RAID-0とRAID-1を組み合わせたRAID-0+1という構成をとれる製品もある。つまり,ストライピングしたディスクをミラーリングで2重化するというもので,ストライピングによる高速化と,ミラーリングによる信頼性向上の両方が実現できる。
実際の導入時には,これらの特徴を理解して自分の環境に適したレベルのRAIDが使えるNAS製品を選ぶことになるだろう。さらに,もし障害発生時にNASを止めたくない場合は,運転しながらディスク装置を入れ替えられる「ホットスワップ」が可能かどうかも併せてチェックしておくとよい。
使いやすいWSS搭載NAS
表3[拡大表示]に示したサーバー型NAS製品のOSを見てみると,Windows Storage Server 2003(WSS2003)とLinuxを使っている2種類の製品が存在するのがわかる。ハードディスク型NASのOSはすべてLinuxだったが,取材してみたところサーバー型はむしろWSS2003が圧倒的に優勢のようだ。
WSS2003は,すべての管理作業をWebブラウザから可能にするなど,NAS向けに最適化したWindows Server 2003である。バックアップやウイルス対策など一部の機能を除いて,通常のアプリケーションを動かすことはできず,ファイル・サーバーでしか使えない。こういう制約があるが,中身は通常のWindows Server 2003とほとんど同じである。
このため,もしすでにWindowsドメインを運用しているユーザーなら,WSS2003搭載NASを導入した際に改めてユーザーを登録し直す必要がない。既存のユーザーやグループの情報を使って,認証やアクセス権の制御を簡単に設定できる。グループ・ポリシーやKerberos(ケルベロス)認証,暗号化ファイル・システムといったWindows独自の機能も問題なく利用可能である。
それ以外にも,WSS2003を採用したNASでは,「共有フォルダのシャドウ・コピー」という機能が使える。これは,NAS上に保存していた以前のファイルをユーザー自身で復活できる機能である(図4[拡大表示])。サーバー上の共有フォルダのデータを,一定時間ごとにコピーしており,誤って削除したファイルを復活させたり,上書きしてしまったファイルを以前のものと入れ替えるといったことが可能だ。
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